第7章 ドキドキ×ハラハラ!×なりたい理由
階段を駆け上がって出口を抜けると、少し先に濃い霧に覆われた森が広がっているのが見えた。
「ヌメーレ湿原、通称“詐欺師の塒”」
私の隣にやって来て足を止めたサトツさんがそう呟く。
「二次試験会場へはここを通って行かなければなりません」
続々と出口から現れる受験者達の中にゴンやクラピカさん達の姿を見つけてほっと息をついた。
「この湿原にしか居ない珍奇な動物たちのその多くが、人間を欺き食糧にしようとする狡猾で貪欲な生き物です」
そこまで言い切ったサトツさんの言葉に応えるように、出口にシャッターが下りていく。
「ま、待ってくれっ!」
シャッターの向こう、出口まであと少しと言った所でこちらに向かって手を伸ばしている男の人も居た。
けれどシャッターが待ってくれる筈はなく、しばらくして出口は音を立てて閉ざされた。
「それが詐欺師の塒と言われる所以です。十分注意してついて来て下さい」
それは逆に言えば、サトツさんを見失わなければゴールに辿り着くのは容易いと言うことなのだろうか。
「騙されると、……死にますよ」
そう簡単にはクリア出来ないとでも言うような物言いに、少しだけ胸が躍る。
けれどその場に居る殆どの人達が息を吞んでいることに気付き、自分の感覚は少しズレているのかもしれないと感じたその時だった。
「嘘だ!そいつは嘘を吐いている!!」
私達の前にどこからとも無く現れたのは、布に包まれた何かを持った全身ボロボロの男。
「そいつは偽物だ!試験官じゃない!!」
男はサトツさんを指差して捲し立てるようにそう言い放った。
「オレが本物の試験官だ!!」
その言葉を聞いた受験者達に一気に動揺の色が走る。
数人のざわめきが周りに広がり、すぐに全体が混乱し始めたのが見て取れた。
男の言葉に騙される人がこんなにも多いことに内心呆れてしまう。
けれど男の言うことが嘘だと気づいている人は、私の他にも何人かいるはず。
その人達と協力してこの場をどうにかしないと少し面倒臭いことになりそうだ。
『偽物っ!?どうゆうことだよ!』
その時、ざわつく受験者達の中でもレオリオさんの声が一際大きく聞こえて来て思わず苦笑してしまった。
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