第7章 ドキドキ×ハラハラ!×なりたい理由
あの後何とも言えない空気の中、サトツさんが「先を急ぎましょう」と言って走り出してくれたおかげで、その場はなんとかなった。
けれど、目立つ行動をしてしまったせいか周りからの視線が痛い。
あの時の自分の行動を思い出すと恥ずかしさと後悔から溜息が漏れた。
しかもいつの間にかレオリオさん達を置いて来てしまったみたいで、目の前にはゴンとキルアくん、そしてサトツさんしか居ない。
これも視線を集める原因のひとつになっているのかもしれない。
『さっきは助けてくれてありがとう!』
そんなことを考えていると、前を走っていたゴンが突然キルアくんに話しかけた。
『別に……、助けた訳じゃない』
『『えっ?』』
無表情のまま答え淡々と足を動かす彼の言葉に、私は無意識のうちに言葉を発していた。
『言ったろ?これは“ゲーム”だって』
キルアくんは、本気でハンター試験を受けに来ている人達を馬鹿にするように言った。
けれどその言葉と私の目を覚まさせてくれた時の表情とがあまりにも違い過ぎていて、どちらが本当の彼なのかわからない。
あの時のキルアくんは苦しそうな表情をしているように見えたけれど、私の見間違いだったのだろうか。
「さて皆さん、そろそろラストスパートです。ちょっとペースを上げますよ」
そう言ってさっきよりも足の動きを速め、目の前に現れた急な階段を変わらぬペースで駆け上がるサトツさん。
その先に小さく光が差し込んで来るのが見えて、出口が近いのだとわかる。
『出口だ!!』
嬉しそうに声を上げるゴンは年相応と言った感じで、見ていてとても微笑ましい。
『嬉しそうだな』
それに対してキルアくんは少しの笑顔も見せない。
息も乱れてはいないようだし、本当にこの子は一体何者なんだろう。
『キルアは嬉しくないの?』
『別に、ただの出口だ』
首を傾げて問いかけるゴンに、キルアくんは頭の後ろで腕を組みながら気怠げに答える。
『つまんねぇ試験だな…、これじゃゲームにもならない』
私でさえ外の新鮮な空気を吸えることに少なからず喜んでいるのに…。
ここに来てなんとなくキルアくんのことがわかった気がする。
この子は冷めているのではなく、ひねくれているのだと。
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