第7章 ドキドキ×ハラハラ!×なりたい理由
さっきと同じように爆発によって出来た穴から別の通路に移ったのはいいけれど、砂埃が立ち込めていて周りがよく見えない。
けれど、未だに私の右手を握っているキルアくんの姿だけはなんとか捉えることが出来た。
そしてふと気になったのは、何故彼はこんなにも私に構うのだろうかということ。
嫌われているわけではないと思うけれど、彼に好かれるような何かをした覚えもない。
そんな疑問を感じながら彼の背中を見つめていた。
けれどそこで、今まで気付かなかったことが不思議なくらいに周りが騒がしいことに気付く。
あちこちから上がる声を聞き流していると、次第に砂埃がおさまり私達を取り囲むようにして立っている受験者達の姿が現れた。
状況を把握し切れていない様子の受験者達の中に表情を変えないサトツさんの姿を見つけ、本当に先頭集団に追いつけたことに驚く。
「いったい何事ですか?」
自分達(主にキルアくん)が壁を壊してしまった罪悪感からか、サトツさんの声が最初に聞いた時よりも低く聞こえた。
『ごめんなさいっ、壊しちゃった…』
ゴンもそんな風に感じたのか、声がだんだん小さくなっていく。
「壊してはいけない、とは一言も言ってませんよ。惑わしの道に入ってよく生還出来ましたね、……大したものです」
私達を褒めてくれているのはわかったけれど、私は正直喜べなかった。
たぶん、私はみんなが居なかったら今この場所には居なかっただろうから。
「そんなっ、今年のルーキーは一体どうなってるんだ!?」
聞き覚えのあるその声に、沈んでいた心がさらに冷たく冷えていくのがわかった。
探していた声の主と目が合うと、彼は見るからに焦っていた。
自分が罠に嵌めたはずの人間が何事もなかったかのように目の前に現れれば驚きもするだろう。
『てめぇ……』
すぐ近くで怒りに震える声が聞こえ、それと同時にトンパの方へと歩みを進めるレオリオさんの姿が視界の端に映る。
『よくも騙しやがったな!!』
さらに怒鳴りつけるレオリオさんを見て途端に顔を青くするトンパ。
彼はレオリオさんに何をされても文句は言えない。
あの人はそれくらいのことをしたと、私も思う。
けれど私は、トンパに殴り掛かろうとするレオリオさんの腕を掴んでその動きを止めた。
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