第7章 ドキドキ×ハラハラ!×なりたい理由
私の話に耳を傾けながら眉を寄せていたレオリオさんは、不意に表情緩めて口を開いた。
『で、お前らはなんともなかったのか?』
そう聞かれた私はクラピカさんと一瞬目を合わせ、曖昧に笑って返す。
『私とクラピカさんが、ちょっと……』
正直あの時のことなんて思い出したくない。
けれど、自分が思い出したくないと思っていてもその光景は頭の中に浮かぶ。
幸せそうに笑う両親と幼い日の私。
誰もこれから起こることなんて知らずに、いつも通り過ごしていた。
私の中の記憶とさっき惑わし杉に見せられた光景とで違っていたのは一ケ所だけ。
目の前で2人が殺されて、事切れるその瞬間まで踠き苦しんでいたということ。
それが幻であることもさっき両親に言われた言葉が偽物だってことも、私が一番よく知っている。
けれど何故か手の震えは止まらなくて、それを隠すように背中に回した掌でワンピースをきつく握りしめていた。
『オレはなんともなかったよ!』
私の横で明るく言い放ったゴンはどこか得意気で、強ばっていた表情がふっと緩むのがわかった。
それと同時に過去に苦しい体験をしていないゴンが羨ましく、そして少しだけ妬ましかった。
その感情を知られてしまうのが恐くてゴンから目を逸らすと、呆れ半分関心半分で笑うレオリオさんが目に入る。
『確かに、ゴンには効きそうにねぇなっ!』
自分が酷く心の狭い人間に思えて、無意識のうちに俯いていた。
そのまま地面をぼーっと見つめていると、不意に右手に温かいものが触れて驚く。
『おっさん、無駄話してる暇ないぜ?』
私の右手を引いて言ったのはキルアくんだった。
『…おっさん?……あ、お前っ!!』
レオリオさんは途端に嫌そうな顔をしていたけれど、今はそんなことどうでも良い。
それよりも右手から伝わってくる熱のせいで心臓が煩くて仕方ない。
『キルアっていうんだ』
ゴンの呟きなんて気にもせずキルアくんはにやりと笑う。
『んじゃ、次いくぜ!』
その手にはさっきの爆弾が数個握られていて、止める暇もなく目の前の壁に投げつけられる。
さっきの数倍は大きいだろう爆音と共に巻き起こる爆風。
咄嗟に目を閉じた私は、何故か右手に感じるぬくもりをぎゅっと握りしめていた。
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