第5章 暗闇×過去×甘い罠
『私も一緒に行こう。時間なんていつでも取り戻せる』
私の隣に立ったクラピカさんが迷いなく言い、その言葉にゴンが嬉しそうに笑う。
『私も行く!なんだか嫌な予感がするの…』
この予感が外れることを祈りながらそう言葉にすると、ゴンも小さく頷いてくれた。
そしてふと、銀髪の男の子も私達に付いてくるのかと気になった。
彼はレオリオさんのことをあまり心配していないと言うか、むしろ見捨てるくらいの勢いだった。
そんな彼が私達に付いてくくるとは思えなかったが、それなら何故、彼は今この場にいるんだろう。
視線を銀髪の男の子の方へ向けると何故か目が合ってしまって、慌てて目を逸らす。
(なんだかあの子とは、こういうことが多い気がする…)
そんなことを考えていると、ゴンがもう一度銀髪の男の子に向き直って言った。
『必ず戻って来るよ。そしたら、やっぱり名前教えてくれると嬉しいな』
表情を変えない銀髪の男の子に、ゴンが苦笑混じりで続ける。
『なんて呼べばいいかわかんないし……じゃあまた後でね!』
けれど彼は何の反応も示さず、そのままゴンが走り出す。
その後ろ姿を目で追っているものの銀髪の男の子は動こうとはしない。
そしてゴンの後を追うように走り出したクラピカさんに倣って、私もその場を離れた。
道を戻るに連れてトンパの言っていた“甘い匂い”が濃くなっていくのがわかる。
『あれっ?』
分岐点のすぐ近くまで来ると誰かが倒れているのが見えて、それが誰なのかに気付いた私達は足の動きを速めた。
『トンパさんっ!どうしたの!?』
一番に駆け寄ったゴンがそう声をかけると、トンパは小さく呻き声を上げてゆっくりと体を起こした。
「た、大変だ……早く、2人を早く!!」
(……“2人”?)
私達の方へ顔を向けたトンパは額に汗を滲ませながら早口で捲し立てた。
『中で何があった!?』
2人という言葉に少し疑問を感じたが、話はそのまま進められていく。
「こんな罠は初めてだ……急げっ!!」
震えた声で途切れ途切れ返すトンパから、余程の事態が起きたのだと感じ取った私達は急いでもう一つの道へと走り出した。
私達の後ろで、トンパがほくそ笑んでいるとは知らずに―ー――――…
*