第5章 暗闇×過去×甘い罠
レオリオさんはトンパを信じているみたいだし、私が人を信用しなさすぎるだけなのかもしれない。
『悪ぃなトンパ……ナナ、ゴン、お前らは先に行けっ』
力なく笑うレオリオさんに私は何も言えず、そして誰も何も言えるはずがないそう思った。
けれど、ゴンだけは違ったのだ。
『レオリオ、……でも!!』
力強くそう言ったゴンの表情からは、ついて行きたいという気持ちが滲み出ていた。
『行けって言ってんのがわからねぇのかっ!!』
その直後に発せられたレオリオさんの怒鳴り声に体がびくりと跳ねる。
それでもゴンは数秒考え込む様に俯いて背にあった釣竿を手に取る。
そのまま釣竿を器用に操り、置きっぱなしになっていたレオリオさんのカバンを自分の手元に運ぶと真剣な表情で言った。
『…わかった。レオリオを頼むよ』
レオリオさんにカバンを手渡して、トンパの顔をじっと見つめる。
「あぁ!」
ゆっくりと頷いたトンパがレオリオを支えながらついさっき走って来た道を引き返していく。
その後ろ姿をじっと見つめていたけれど、悪い予感は募る一方だった。
2人の姿が完全に通路の闇の中に消えてしまった頃には、やはり自分も付いて行けば良かったと思うようになっていた。
今はただレオリオさん達は大丈夫…無事に戻ってくる、そう自分に言い聞かせるしかない。
『なにしてる、行かないのか?』
少しの苛立ちを含んだその言葉は、私達を待ってくれているのかその場から動こうとしない銀髪の男の子のもの。
『ぁ、付き合わせちゃってごめん。先に行っててよ』
そうゴンが返すと、銀髪の男の子はきょとんとした顔で言った。
『お前は行かないのか?』
『うん、レオリオが戻って来ないと…』
先に行けと言われて頷きはしたものの、心配なものは心配で。
先に進まなくては自分も合格出来なくなるとわかっていても、体がこの場から動こうとしないのはゴンも同じらしい。
『……ナナ、クラピカ、オレやっぱり様子見て来るよ』
ゴンは真剣な目で2人の歩いて行った暗闇を見つめながら続けた。
『トンパさんはああ言ってたけど、……やっぱり心配だ!』
私がゴンのその言葉に頷かないはずがなかった。
*