第4章 マラソン×再会×新たな出会い
一度そう思ったら、自分の横を走る男の子があのゴンにしか思えなくなってくるから不思議だ。
『もしかして、くじら島に住んでる……?』
昔住んでいた懐かしい島の名前を口にすると、男の子は一瞬目を見開いて首を傾げた。
『そうだけど…、でもなんで知ってるの?』
その答えを聞いて確信した。
今目の前に居るゴンが、あの時のゴンなのだと。
『えっと……私ナナって言うんだけど、覚えてないかな?』
もともとくじら島には子供が少なかったから、一緒に遊んでいたのはゴンくらいしか居ない。
だからもしゴンが私のことを忘れていたら、いくら私でも少し傷ついてしまいそうな気がする。
うんうん唸りながら隣を走るゴンを見つめつつ足を動かす。
『あああぁぁぁーーーっ!!』
突然の大きな声に驚く暇もなく、ゴンは私を指差しながら続けた。
『もしかして、小さい頃一緒に遊んでたナナ!?』
引き攣った顔のまま私が小さく頷くと途端に笑顔になるゴン。
『うわぁ〜、こんなことってあるんだね』
嬉しそうにしみじみと呟くゴンにつられて私の頬も緩んだ。
『ね、ほんとにびっくりだよ』
そのまま2人でくすくすと笑いながら足を動かしていると、ゴンが急に爆弾を投下する。
『ナナすっごく綺麗になってるから、一瞬誰だかわかんなかったよ!』
その言葉に自分の顔が一気に熱くなるのを感じた。
『かッ、からかわないでよ!!』
赤くなった自分の顔を隠したくて半ば叫ぶように言うと、
『からかってなんかないよ!』
全力で否定され、驚いた私は思わずゴンを見た。
真剣な目で私を見つめるゴンに一瞬ドキリとして、それを悟られないように微笑んだ。
『ゴン……、ありがとう…』
そんな私に、ゴンがはにかむように笑い返してくれる。
たぶんこんな風に言ってくれるのはゴンだけだろうな、なんて考えて少し悲しくなった。
『ゴ――ン!どこ行ったんだぁ~!?』
少し離れた所から聞こえて来たゴンを呼ぶ声。
『あっ!レオリオの声だ!』
聞いたことのない名前に首を傾げる。
『…レオリオ?』
『オレの仲間なんだ!紹介するよ』
笑顔でそう言ったゴンは、私の手を引いて走り出した。
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