第3章 決意×出発×試験開始
背を向けていた木に向き直って待っていると、ニール兄さんが後ろ頭をかきながら姿を見せた。
「……バレてた?」
白々しすぎるその態度に思わず溜息が漏れる。
『バレるも何も、わざとなんでしょう?』
ニール兄さんなら、僅かなオーラすら感じさせないくらいの絶が出来ることを私は知っている。
「そこまでお見通しなのかよ…」
拗ねたような顔で降参だとばかりに両手を上げるニール兄さんは、あの頃と何も変わらない。
『6年も一緒に居るんだから……、それくらいわかりますよ』
だから、なんでニール兄さんがここに来たのかも大体予想がつく。
「……やっぱり行くのか?」
ニール兄さんが言ってるのは、今から受けに行くハンター試験のことではない。
私がハンターライセンスを手に入れてからしようとしている、“その後”のことだ。
『っ、……はい』
声は小さくなってしまったけれど、ちゃんとニール兄さんの目を見て言えた。
「そっか……なら、俺は何も言わねぇ」
暫くじっと私を見つめ黙り込んでいたニール兄さんは目を細めて笑った。
その表情がどこか悲しげに見えて、私がそうさせているのだと思うと胸の奥が痛かった。
復讐は負の連鎖を生むだけで、なんの意味も持たない。
私が強くなりたい理由を聞かれて、両親を殺したアイツの話をした時にニール兄さんが私に言った言葉だ。
アイツを殺せば私は目的を果たしたことになる。
けれどそのせいで今度は私を殺そうとする人間が出て来るかもしれないし、私の周りの人間が危険に晒されるかもしれない。
私もそれは理解している。
だけど、血溜りに横たわる両親と闇しか移さないアイツの瞳が、目に焼き付いて離れないんだ。
それに、私はこの深く根付いてる感情を抑え込める程大人じゃない。
だから復讐を諦めることだけは絶対にしないと決めた。
(ごめんなさい、ニール兄さん。……やっぱり私許せないんです)
(両親を殺したイルミ=ゾルディックのことーーー…)
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