第11章 探検×休息?×夢の中
「が、受験番号111番は二次試験追試で……失格となっているはずじゃ」
受験番号111番が、目の前の女を指すものだってことに気付いた頃には、女の敵意は完全に消え失せていた。
「事情はどうあれ、失格したお前さんに…」
ゆっくりと諭すような口調で語られたのは、俺と女の決定的な力量差。
「敵う相手ではないよ」
そこまで聞いた女の掌からナイフが零れ落ちて行くのを、俺は他人事のように眺めていた。
床に散乱したカップやらなんて片付ける暇もなく、サングラスをかけた黒服の男と会長のじいさんに、アニタという女は連れて行かれた。
ラウンジの横から上の階へと続く階段を登っていくその姿を、四人で後ろから眺めている時、レオリオがぼそりと口を開いた。
『密航したって、すぐバレるってことぐらいわかりそうなもんだがな』
レオリオの言うことは最もだろう。
けれどそれが、強い恨みをもつ人間に通用するかどうかはまた別問題だ。
『私も試験に落ちていたら、同じことをしたかもしれない』
そう、レオリオのあとに続けて言ったのはクラピカだった。
こいつはあの女の気持ちが、誰かを恨む気持ちがわかる側の人間なのかもしれない。
俺にはまだ、どう足掻いてもわからない感情だった。
『理屈じゃないんだ……こればかりは』
クラピカの言いたいことは、何となくわかる気がした。
『理屈じゃない……か』
ただ、俺はいつでも、その理屈ではどうにもならない負の感情をぶつけられる側だ。
『……ルア!!』
誰かを殺したいという感情を抑えきれず、それを実行するだけの勇気のない人間。
殺しがバレるとまずい地位にいる人間。
そいつらの代わりに殺しをする。
それで恨みを買って、狙われて。自分の生きたいように生きれない。
だから、あそこから抜け出して来たはずだった。
それなのにどこへ行っても、この名前は尾を引いて回る。
もうたくさんだ。
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