第11章 探検×休息?×夢の中
女はわざわざ俺達のテーブルに椅子を持って来て、通路に椅子を置く形で陣取る。
そして自分の飲み物が運ばれてきたところで、そいつは自分の名前を「アニタ」だと名乗った。
『へぇ~、アニタさんって言うんだ!』
ゴンのそんな声を聞いてはいたが、俺はその女を避けるように通路とは反対の方向に身体を向けていた。
『あのね、オレはゴン!こっちがキルア……』
明るく話すゴンの声がだんだん小さくなっていったのは、きっと俺がこの女とよろしくする気がないのを、何となく感じ取ったからだろう。
と言うか、アニタって奴の方こそ俺と仲良くする気なんてさらさらないはずだ。
「私は、ブラックリストハンターを目指しているの」
早速本題が出たと、それを聞いた瞬間思った。
『誰か、捕まえたい人が居るとか?』
何もわかっていないゴンがそんなことを聞くのを、俺は何も言わずに聞いていた。
ゴンにもその女にも目を向けることなく、ただ俯いて。
「仇を討ちたいの」
静かな声の中に恨みを感じ取るのは、俺がそう思い込んでいるからか。
俺の家じゃ、仇討ちされるってのはよくある話だ。
俺自身が手を下した訳じゃないのに狙われることも、無くはない。
「殺された父さんの仇を……」
殺した奴の顔なんて一々覚えちゃいないが、こいつの父親を殺したのも案外俺だったりするのかもしれないな。
そう言えば、ナナもこいつと同じようなことを言っていたっけ。
ナナの場合、殺されたのは親二人共って話だったか。
「私の父さんは、スパイス鉱山を取り仕切る貿易商人だったわ」
貿易商人。
それだけを聞けばどこにでもあるような職業なんだろうけど、問題は“スパイス”という言葉だ。
「船団を組んで、スパイス鉱山から香辛石を世界各地に輸出していたのよ」
それがまるで誇らしいことかのように話すこいつは、
「最盛期には、小さな国を丸ごと買い取れる程の利益を上げていたわ」
自分の父親が何を売り捌いていたかも知らずに、今まで生きてきたのか。
『へぇ~、すごいねぇ!』
ゴンは純粋にそう思ったんだろうけど、俺には到底そんな風には思えなかった。
*