第11章 探検×休息?×夢の中
通路や階段、似たような景色しか見ていなかったからか、随分走らされたような気分になる。
『お!あったあった!』
嬉しそうな声を上げて、ある扉の前で立ち止まったキルアに倣って、私とゴンも足を止める。
扉に大きく書かれている「立入禁止」の文字が見えているのかいないのか、キルアは扉のノブに手を掛けた。
『ねぇ、立入禁止らしいけど?』
私の言葉が気に食わなかったのか、こちらに向けられたキルアの顔はどことなくふくれっ面だ。
『だから探検なんだよ!』
どういう理屈か点で理解できないが、キルアに言わせるとそう言うことらしい。
キルアはそのままゆっくりと扉を押し開け、中を覗き込む。
ゴンはそのあとを恐る恐る付いて行っているような感じだ。
けれど私は、どうしても付いて行く気にはなれず、入り口近くの壁に凭れて待っていることにした。
コックピットの中は、外から見ても明らかに薄暗く、操縦の為の画面か何かが所々で光っているのが見えた。
「風邪も穏やかだし、視界も良好」
扉を開けっぱなしているからか、操縦士の独り言のような声が聞こえてくる。
「こんな夜のフライトで一番恐いのは眠気だ」
部屋一面に取り付けられた、空のよく見える硝子窓から外を見ているだろう操縦士の背中に、キルアがそっと忍び寄るのが見えた。
「手が空いたら、お茶でも入れてくれ」
キルアを誰か飛行船の関係者と勘違いしたのか、操縦士の男性からそんな言葉が投げかけられる。
『自分で入れなよ、お茶くらい!』
まさかそれに、キルアが応えるだなんて思ってもみなかったけれど。
『横着しないでさっ』
そんな言葉が聞こえれば、この船の安全を任されている操縦士でもこちらを振り返らないはずがない。
操縦士の男性は、暗がりの中でもわかる驚きの表情をキルアに向けた。
『でも……、操縦させてくれるんなら淹れてあげてもいいけどな!』
そんな大胆不敵とも言える発言をしたキルアと、コックピットに入ったが為にとばっちりを受けたゴンが、操縦士の手によって廊下の床に転がされるのは、ほんの数秒後のことである。
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