第3章 私の本丸だ
六弥の態度にイライラしつつ私は暗い廊下を壁伝いに歩いていた。
「で? 私は何をすればいいわけ?」
『簡単さ、今持っているこの端末でここの本丸の主がしている悪事を撮影してくれればいい。あとはこっちで始末付けるからさ。』
「そんなに簡単な事でいいなら、こんのすけくんにでも撮影してきてもらえばいいじゃない」
そうすれば、わざわざ私を送り込まずとも早くケリがつくのに。
『……そうもいかないんだよね。
ここの審神者はなかなか食えない奴でね。 演練で手合わせした本丸の審神者からの申告で今回の醜態が発覚したんだけど、いくら人を送り込んでもなかなか尻尾を掴めなくて。 と言うか本来なら正規の手順で侵入した時点でバレるからアウトだったんだ。だから……』
「あぁ、だから'初心者'の私をあんな乱雑な方法で転送をされたんですね?」
本来なら霊力のある者が移動用のゲートをくぐるだけで、目的地につくように出来ている。とテキストに書いてあるのを見てあのトンネルでどれだけ私がキレていたことか。
『随分棘のある言い方だけど、その通り。
なかなか感がいいね。初心者だったら'間違って別の場所にゲートを開いて入ってしまった'って言い訳も立つでしょ?
それにすぐに新しい審神者を用意して本丸の現状を改善してあげなきゃ刀剣男士達が可愛そうだ』
そう言って六弥は少し寂しそうな表情をした。
「……」
『とりあえず、何かおかしいと思う事があったら'コレ'で撮影してくれればいいから。それじゃ、バッテリー勿体ないから切るねー』
「え、ちょっと!?」
問答無用で通話を切られた私は暗い廊下を見渡してため息を吐いた。
「せめてここの間取り教えろっての……」
ハァ……自分の足使うしかないか。
タブレット端末を片手に私は廊下を歩き出した。
30分ほどこの本丸を歩き回り、この本丸の実情がわかってきた。
枯渇した資源。
荒れた畑。
埃まみれで汚れた屋敷内。
仮にも人の姿を持つ付喪神が生活しているとは思えない。
初心者の私が見ても異常だと理解できるレベルの生活感のなさだ。
と言うか…
「これだけ好き勝手に歩き回ってるのに刀剣男士に一向に合わないんですけど……。」
屋敷内を歩き回ったが誰ともで合わない。
その結果、独り言が増え始め、残すは武道場のみとなった。