第3章 私の本丸だ
母屋と武道場をつなぐ渡り廊下を『そろそろ人に会いたいなー』なんて大きな独り言を呟きながら渡っていると、道場の方からドタドタと複数の人が床板を蹴る音が響いた。
『第一村人発見!?』なんて頭の中で呑気にテロップが表示され、そっと道場の扉を開き中を覗き込む。
武道場って事は訓練の最中とかかな?
そんな甘い私の考えを切り裂くかのような光景が、目の前に広がっていた。
血に濡れた床に沈んだ十数人の少年と刀を構える2人の少年、そしてそれを嬉々として眺める少女が居た。
「やっぱり薬研と厚が残ったのね!!
2人が私を取り合って争うなんて、やっぱり私って罪な女ぁ〜」
そう言ってふわふわした雰囲気の女の子は刀を構え、息絶えだえの2人の少年に「ねぇねぇ、早く決着付けてよぉ」なんて笑顔で声をかける。
さ、撮影しなきゃ…
震える手でカメラを向け、道場内の狂気じみた光景を撮影して行く。
そして刀を構えた少年達にタブレットを向けると、一人が私に気付き目を向けた。
疲れきったその瞳に私は過去の自分を重ねた。
『嫌だよ、、、もう、、痛いのは嫌だよ。』
そう言って初めて自分の意思を訴えた。
そんな私に母は冷めた視線を向けた。
あの時、母さんはなんて言ったんだっけ……。
気がつくと私はタブレットをその場に放りだし駆け出していた。
踏み出した勢いで、自分への御褒美として買ったブランドの8万のスーツの裾に床に伸びた血がはねた。
2人の少年は目を見開き、その場に固まった。
扉から突然現れた私を見た少女が何か叫んだ気がしたが、残念なことに私が拳を振り下ろすのと重なってしまい何を叫んだか分からなかった。
「ひぎゃあっっ」
汚い悲鳴を発した少女は道場の隅に転がり動かなくなった。
「っはぁはぁ…。
…あー意識ないや、やっちったなぁ」
少女を覗き込みそう呟いた私の後ろで、バタりと倒れる音が聞こえた。
「おい厚!! しっかりしろ!!」
さらさらの髪の少年がスポーツ刈りの少年を抱え叫んでいた。
私は無力だ、何をしたらいいかわからない。
けどっ!!
「君、名前は?」
「あんたは……。薬研、、、だ」
「そう、じゃあ薬研くん。君まだ動ける?」
「あ、あぁ」
「だったら、ここにいる他の子の様子を見てくれる?
この子は私がなんとかするから!!」