第2章 あなたは審神者です
【おはようございます。朝のニュースをお伝えします。
先日お伝えした失踪事件の……】
平日の出勤前の朝、毎朝見ているニュース番組がここ数週間話題の失踪事件を報じていた。
今月に入って2人目の失踪。
焼きたての食パンにバターを塗ってかぶりつきながらニュースに耳を傾ける。
【尚、失踪した2名の共通点は'日々の生活に絶望した'、と友人達にこぼしていたと言う点で……】
日々の生活に絶望って、今東京に住んでる若者や全国の就活生全員に共通するんだが?
「……アホくさ。」
ポツリとテレビ画面にそう吐き捨てた。
顔を洗いに洗面所へ向かう途中、新聞も取っていないはずの郵便受けに何かが入っていることに気がついた。
「なに…これ?」
郵便受けを開けると、中から美しいちりめん柄の円い筒が出てきた。
茶筒よりは長く卒業証書を入れる筒よりも短い、円い筒。
キュゥゥッッ………
「え、なにこれカッッタ!!!」
なんの疑いもなく、謎の筒を開けようと短い蓋のような部分を引っ張たが、中が真空状態なのかなかなかあかない。
「んにゃろ!!!」
その硬さに何故か、絶対に開けてやると言う不思議なやる気が溢れてきた私は、その容器を思いっきり引っ張った。
…キュゥ……ゥゥゥゥゥポン!!!
「わっっ!!!」
気持ちの良い音が鳴り響いたと思うと、私は容器を開けた反動で後ろに転がった。
フローリングなら確実にコブができるだろうという勢いで後頭部を強打した私は頭を抱え少しのたうち回った後、頭をさすりながら上半身を起こした。
「っててて。 ん?…た、畳!?」
自分の今座っている場所の素材に改めて触れ、ハッとして目線を下げた。
家賃9万のワンルームには存在しないはず……
しかし自分が座り込んでいるのは確かに畳で、しかも日に焼けていない擦れた後もない真新しい畳だった。