第3章 私の本丸だ
一通りの'やるべき事'を終え、私は縁側の柱にもたれかかった。
これからどうするか……。
彼らはきっと人を恨んでいるだろう、あのクソ野郎は許せとは言えないし私は言うつもりもない。けど、人と共に時を過ごした付喪神の彼らに人を恨んで欲しくないなぁ。
ぼーっと東に傾いた太陽を眺めていると背後に視線を感じる。
振り返ると骨喰くんと鯰尾くんが立っていた。
「お疲れ様……2人とも手伝ってくれてありがとね。ケガ無さそうだけど、どうかした?」
「弟達のこと、礼を言う。ありがとう。」
鯰尾くんがそう言って頭を下げると、骨喰くんも頭を下げてくれた。
「お礼言うのはこっちの方だよー。
それにこちらこそ感じだしね……本当は私の指示なんて聞きたくなかったでしょ?」
「そりゃ、最初に見た時はまた石川が変なのを連れてきたっておもったけど……」
「あんたは、俺達を救いに来てくれたんだろ?」
「だから貴方は、俺達の救世主ってやつだよ」
私が苦笑いでそう言うと、2人はそう言ってまた頭を下げた。
「そんなに凄いわけじゃないよ。
それに、私も最初はここに来るの嫌だったし。」
「……政府の人間はなりたくて審神者になっている訳では無いのか?」
「んー、少なくとも私は違うね。陸奥守吉行に話した通り、ただ霊力が高いからって理由で巻き込まれただけみたいだし……」
「では、すぐに居なくなってしまうのか?」
骨喰くんの言葉に違和感を感じたが、「それは無理かな?」とあっけらかんと返した。
「一応契約書には、この本丸の立て直しと歴史修正主義者の一掃って書かれてたから契約上まだ戻れないねぇ」
これでも一応社会人なので、重要書類の内容は一通り確認してからサインしている。
「そうか……」
ほっとしたように表情筋を緩めた二人は私の隣にしゃがみこむと、それぞれ片手ずつ私の手を握った。
「え、ちょっとどうしたの!?」
「数々の無礼を詫びる。すまなかった」
「それで、もし良ければ俺達の兄を治してもらいたい。」
「お兄さん?」
「あぁ、粟田口唯一の太刀『一期一振』。俺達の兄貴だ。」
「けど、どこに……ここには居ないみたいだけど。」