第3章 私の本丸だ
「無理はせんようにな……」
そう言い残し、陸奥守吉行が歩き出した。
終始私を睨みつけていた『伽羅ちゃん』、乙女のように唇を抑えていた眼帯くん、『御手杵』くんをニヤニヤしながら見つめていた『獅子王』くん、すれ違いざまにに私の頭に手を置いて撫でてくれた『御手杵』くんは彼の後を追っていった。
警戒してると言いながらも、私を心配してくれる彼はきっと優しい人なんだろう。
こんな素敵な本丸を譲り受けたんだ、ここを一刻も早く元に戻さない限り私の休みはない。
改めて覚悟を決め、私は鯰尾くんと骨喰くんの正面に立つと頭を下げた。
「君たちには、辛いことをお願いするんだけど……奥の部屋の彼らが一刻を争うレベルの重症なのは確実なんだ。だから……」
『助けて欲しい』。そう言い終わる前に肩を掴まれ顔を上げられた。
「…何をすればいい」
「なんでも言ってください!!」
真っ直ぐな2人の目が私を見つめている。
「この人なら助けてくれる」という強い期待を彼らの熱い視線が物語っていた。
「っありがとう!! とりあえずあの部屋から出さないと治るものも治らない。 こっちの部屋に布団にを敷くから……」
私が布団を敷き終えると、2人が1人ずつ部屋のけが人を、連れてきて寝かせていく。
体力的に直接流し込むだけでは補いきれないので、再度六弥に連絡を取り事情を説明して(めちゃくちゃ怒られた)資源を送ってもらった。
鯰尾くんと骨喰くんに手伝ってもらいながら7人の手入れを無事終えた頃、ようやく口元に布を巻いた黒服の男達が現れた。
黒服(聞くところによると六弥の式神)に現場の状況の報告と今後の確認を終え、ふと庭に視線を向けると放置していた石川の姿がないことに気がついた。
どうやら、道場の方の華さんと一緒に黒服が連れていったようだ。
バタバタと連れてきてもらった短刀の子達の手入れを終える頃には、本丸中を歩き回っていた黒服も1人となっていた。
とりあえず当面は私がココの立て直しを任されるようで、後ほど担当の管狐が派遣されるらしい。
報告を終えて黒服が消えていくのを見送った。