第3章 私の本丸だ
「あ、ありがとう……」
お礼を言って手を掴むと、やんちゃそうな男の子は手を引いて立たせてくれた。
「獅子王、ナイスじゃ!!」
陸奥守吉行がそう言うと、やんちゃそうな男の子は私から手を離して「じっちゃんが女には優しくしろって言ったから……」と言ってふわふわした黒い物体を肩に乗せた。
「君は……他の子よりマシみたいだね。」
所々擦り傷はあるものの、他の刀剣男士に比べれば怪我は軽いようだった。
「……あぁ、俺は最近ここに来た所だからそんなに戦場にも出てないし、手入れを受けるほどじゃない。」
なるほど……。つまり、あのひどい怪我の子達は手入れもされないまま戦場に出され続けたわけか。
けどそうまでして出撃していたなら、なんであんなに資源が枯渇しているのかが疑問だ。
「お、おんし。そんなに無造作に霊力与えちょったら、おんしがの霊力危ないんじゃ……って聞いとらんのか??」
この本丸の合わない辻褄を考えていると、突然目の前に陸奥守吉行が顔が飛び込んできた。
「わっ!! びっくりした…何か言った??」
私の言葉に陸奥守吉行はため息をつくと「この嬢ちゃんは…」と呟いた。
「えっと、多分心配してくれてるんだよね??
ありがと……けど、これが私の仕事だからね。」
「仕事?」
私の言葉に不思議そうな顔をした『御手杵』くんがそう呟いた。
「そ、お仕事。
だから上司…とはまだ認めてないけど、あいつに指示されたことはちゃんとやらないと……って言うことで、次は陸奥守吉行っ。君に決めた!!」
重くなった空気を誤魔化すように私は、幼い頃見た大人気アニメの真似をして陸奥守吉行に近づいた。
「え、ちょまちぃやって……んむっ。」
私が近づと引きつった顔でワタワタとし始めた陸奥守吉行だったが、唇を奪うととたんに大人しくなった。
「んー………プハァ。」
「った、確かに力は戻ったが……」
口を拭い陸奥守吉行は両手を見つめた。
「……なら良かった。
じゃあ、ちょっと…手伝いを…頼みたいんだけど……」
ちょっとキツくなってきたな……。
正直、今にも倒れそうだが、 石川の部屋の子達の現状と短刀の子達の事を思い出し、歯を食いしばって周囲の刀剣男士に目を向けた。
その場にいた鯰尾くんと骨喰くん以外の刀剣男士達には短刀の子達を広間に連れてきて寝かせるように指示を出した。
