第3章 私の本丸だ
戦場かと思う程の傷を負った刀剣男士が足元に倒れている。
彼らから流れる血液が部屋を真っ赤に染めている中、中央で行われている光景の異様さが際立っていた。
傷だらけの刀剣男士達に腰を振り、自らの昂りをぶつける中年の男。
『これは……』
「な、何を……している。……主?」
「ん? 鯰尾か、厨房の見張りはどうし……」
鯰尾くんの声に振り返った男は目を見開き、跨っていた黒髪の男の子から体を離すと焦ったように私に対し叫んだ。
「な、なんだお前は!!
俺の本丸に無断で立ち入るとは何事だ!!!」
「……はじめまして石川さん。一応連絡のメールが届いているかと思うんですが、確認されていませんか?」
そう言って私がにこやかに返すと、石川は困惑した様に「そんなものは知らん!」と言ってそばにあった着流しに袖を通し始めた。
「あぁ別に服は着なくていいですよ?」
「……何を言って」
『神奈ちゃん!? 待って、まだ……』
六弥の声が聞こえた気がしたが気にせず石川に近づき、ギトギトの髪を掴むと襖を蹴破って中庭へまっすぐ向かった。
「は、離せ!! 俺を誰だと思っている!!」
「気色の悪いおっさん。」
「おっさ……!? 俺は政府から本丸を任された審神者だぞ!」
「あら、奇遇ですね。
私も本丸を任されることになったんですよー。'ココ'」
「何を言って……」
「あ、やっと広いところに出た。」
私は中庭に素足で出てようやく石川から手を離した。
髪を掴んでいたせいか、手がぬるぬるして気持ちが悪い。
「っどう言うつもりだ!! こんな事をして、ただで済むと思っているのか小娘!!」
「えーっと……あ、アレでいいや」
頭を抑えながら叫ぶ石川を無視して私は中庭の端に落ちていた手頃な石を握った。
「おい、聞いているのか!!」
「へ? あぁ、そうですね、お肉って美味しいですよねー」
「そんなこと一言も言っていない!!」
私の言葉に顔を真っ赤にして石川が怒鳴る。
そんな中奥からようやく骨喰くんと鯰尾くんがやってきた。
「そうですか。
で、彼らに言い残すことはありますか?」
「は?」
何を言っているのか分からないとでも言いたげな顔で、石川は私を見ている。
「……そうですか。 じゃあ、彼らの痛みを味わってもらいましょうか?」