第3章 私の本丸だ
六弥によるタブレット越しの誘導で、何とか台所についた私は深呼吸をした。
「すぅ……はぁ……。
よし、行ける!!」
久々に人をぶん殴ったけど、衰えて無いものね。
「さっきの様子見た感じ、神奈ちゃんなんか武道してたの??」
「あー、中学の時にちょっと喧嘩の強い知り合いに教えて貰ったの。
後は、ダイエットにキックボクシングしてたからかな?」
タブレットをから聞こえてきた六弥からの疑問に、胸元のボタンを2つほど外しながら答えた。
扉の前に立ち、深呼吸を再度繰り返す。
なにが来てもいいように心構えをしないと、さっきみたいにまた衝動的に飛び出しかねない。
「とりあえず、覗いてみるか…」
そっと台所の戸をずらして見ると中には誰もいなかった。
「あれ?」
薬研くんの話では誰かしらがいるみたいな感じだったのに。
「神奈ちゃん、気をつけて。」
「誰もいないけど?」
「こっちの画面では探知できてるから、隠密の高い刀が近くにいると思う。」
なるほど、つまりは…
「警戒されてるってこと?」
「そういうこと。」
まぁ、こんな得体の知れない女が忍び込んでたら誰でも警戒して隠れるよね…
「あー、、私は元町神奈。この本丸を引き継ぐために政府から派遣されたんだけど、ここの主に会えなくて彷徨ってます。可能ならここの主さんの所まで案内を頼みたいんだけど……」
言い訳がましい自己紹介を終えると、目の前に刀を構えた同じ目線位の二人の少年が現れた。
「そんな話、主から聞いてないんだけど。」
「それに、、お前から兄弟の血の匂いがする。返答によっては……殺す。」
敵意むき出しで刀を構える二人に睨まれ首に刃が突きつけられる。
「えーー。おかしいな、六弥は確かに連絡はしてるって言ってたのに……。血の匂いに関しては、華だっけ?彼女に聞いてくれる。」
飄々と答える私に怒りを顕にした長髪の少年は、私にさらに刃を近づけた。
「っ!! 答えになっていない!!」
「もっと直接的な言い方をすると、華って奴のせいで君たちの兄弟は折れる寸前だった。応急処置はしてきたけど、このことに関してきちんとした説明をしてもらう必要がある。だからあんた達の主をさがしてんの。」