第10章 連続爆破事件
「『汚濁』をやるまでも無かったな」
「やらないに越したこと無いさ。中也の負担が大き過ぎる」
「………。」
隣に立つ太宰を睨む中也。
「中也」
「……なんだよ」
「もう1つ、頼みたいことがあるのだけど」
「………。」
それを話す前に車が目の前に止まる。
「乗らねえのかよ」
「歩いて帰るさ」
チッと舌打ちして中也は車に乗り込んだ
―――
次の日の午前8時――
プルルルルルルルル……
完全に業務に追われて早朝出勤している国木田。
昨夜も決して早いとは言い難い時間まで働いていたため半分寝ぼけ眼だ。
「はい。此方、武装探偵社……」
そんなときに社の固定電話に一本の電話が掛かってくる
「何!?太宰が失踪!?」
思わず立ち上がって大声を上げた。
慌てて探偵社を飛び出す。
真逆、爆弾魔に誘拐されたんじゃ!?
探偵社の建物を飛び出したところで人とぶつかる。
「うわっ!」
「済まない!急いでて……って谷崎!」
「国木田さん!どうしたンですか?そんなに慌てて……」
「病院から太宰が失踪したと連絡が入った!彼奴はまだ重篤だ!自ら出歩いてるとは思えん!」
「!?」
国木田が説明すると谷崎は慌てて体勢を整える。
「そんな!まさか誘拐!?」
「かもしれん!手分けして捜すぞ!」
「はいっ!」
こうして二人は別々の方へ走り出した。
糞っ!あの宣戦布告にも似た手紙をもう少し真摯に受け止めておけばっ……
後悔ばかり頭をよぎる
ついでに砂色のコートを羽織った包帯グルグル男もやけに鮮明に目の前に映る
は?目の前?
国木田は走るポーズのままピタリとその場に止まる。
「やあ!国木田君!そんなに慌てて何処に行くんだい?タイムセール?」
「………!」
目の前の男が何時もの調子で話し掛けてくる。
感動したのも束の間、次に込み上げてくる感情は矢張り、怒り。
「このっ………迷惑産出器が!」
拳を作り手を振り上げる。
「わー!!ストップストップ!!未だ調子は然程良くないのだよ!」
「だったら何で大人しく寝てないんだ!!!」
「聞いたよ、10件目……あまり現状は良くないだろう?」
「………。」
太宰の云う通りだった。
「それに紬にも会いたかったのだよ」
「そうか……」
国木田は拳をほどいた。