第10章 連続爆破事件
「嘘をついてるかもしれない」
「それはないよ」
ふふっ。と笑って男に云う。
「何故?そう言い切れるんです?」
「嘘を付くメリットが無いからさ」
太宰はキッパリ言った。
「横取りをした彼等は元犯罪者だが、此方側ではないことは判っていたのだよ」
「………。」
「恐らく彼等は計画を密輸組織に話した。今のところ順調に進んでいる彼らの所業に感心したか、或いは自分達の荷物を誉められ煽てられたか。それだけの理由で取引しているだけのこと」
「それと嘘かはどう……」
「ポートマフィアより高値で買うと云えば普通なら売るだろう?」
「!」
「然し、先程も云ったが連中は此方側の人間ではない。そう頻繁に爆薬など使わない……つまり今後の取引は見込めないと云うことだ」
「だからポートマフィアにもう一度頭を下げて客を確保しようと………?」
「そゆこと」
ニッコリ笑う太宰。
「そんな大事なやり取りで、特に庇う必要も無い連中のことを態々嘘付く筈がない。百害あって一利なしだからね」
「「………。」」
この男は何者だろうか。
今の一瞬で此処まで考えれる頭脳と、マフィアや密輸組織を恐れない肝の据わり様。
そして何よりポートマフィアの幹部の知り合い、だ。
「貴方は一体……」
「私かい?私は太宰。後は先輩達にでも聞き給え」
男達に笑い掛けて、中也に視線を戻す。
既に揉めているようだった。
「君達も構えた方がいいよ」
「「!?」」
太宰はこの言葉と一緒に中也に歩み寄る。
「何だ?お前……」
「いやー単細胞の相棒が申し訳無い」
「誰が単細胞だって?」
一瞬で中也の怒りの矛先が太宰に移る。
そんなのを一切気にせずに太宰はリーダーの男に握手を求めるように手を差し出した。
「お前の方が話が分か」
手を握り返すリーダー。
「……分かるかもしれないけれど応じてはあげないよ」
そう言うと手を離す太宰。
リーダーはその姿勢のまま動かなかった。
「中也」
「ああ」
中也と太宰が一斉に動き出した。
相手も応戦に入る。
暫くすると―――
「「………。」」
辺りには潰れた人間以外残らなかった。
その惨状にフリーズしている部下。
「オイ。車まわしてこい」
「!はいっ」
現実に戻って動き出す。