第10章 連続爆破事件
日付が今、正に変わろうとするほどの真夜中。
一台の真っ黒の車が夜道を走っていた。
「!?」
キキーーッ!
「うおっ!」
その車の運転手が慌ててブレーキを踏む。
その反動で後部座席に座っていた男が前の座席で顔面を強打する。
「痛って……何なんだよ!」
「済みませんっ!人がっ……!」
「人だあ!?」
こんな夜中にこんな人気のな居場所にいる人間など堅気なわけ、無い。
チッと舌打ちして車から降りる。
それに続くように前の座席に座っていた男と運転手も懐から銃を取り出して、降りた。
「人の車の前に飛び出てくるなんて随分だ……な…」
その人物を見て、話し掛けた男は驚く。
「いやー轢かれるかもって思ったんだけどね。君達も車汚したくはないだろう?」
轢かれても別に良かったけど。
彼方此方に包帯を巻き、砂色のコートを羽織ったその男はヘラヘラ笑って云った。
「…何で手前ェが此処に居んだよ」
「ちょっと散歩でね。」
その姿を見てうんざりする男、こと中原中也は盛大に舌打ちした。
「今から取引に行くんだろう?私も同行させてもらえないかな?」
男達が一斉に銃を構える。
「……。」
中也が太宰を見つめる。
「返事は?中也」
「駄目に決まってんだろ」
「ああ、そう。ところで中也」
「あ?」
満面な笑みをよこす太宰。
「『ワイン』は美味しかったかい?」
「!」
矢張り、そうか。
何度目かわからない舌打ちをする中也。
「乗れ」
「「中也さん!?」」
「流石ポートマフィア幹部。話が判るね」
ふふふと笑いながら中也の隣に乗り込んだ。
「で?何の用なんだよ、太宰」
「何やら爆弾の密輸を横流しされたって聞いてね」
「笑いに来たのか?」
「真逆。私にとっては楽しくもなんともない話だよ。私が知りたいのは横取りした連中の情報だ」
「……俺達が何しに行くか判ってんだろうな?」
「勿論。『横流し』をあくまで『横取り』されたと言い張る男達に、好条件での取引を要求して和解する」
「……。」
その程度か、と前の男達が鼻をならす。
「取引を無事に終えた瞬間に始末するのだろう?」
「!」
「判ってるならいい。話はさせてやる。その代わり消すのを手伝え」
「ん?『汚濁』でもやる気かい?」
別に構わないけど。とシートに深く座る太宰。