第10章 連続爆破事件
「安静にして下さい!貴女も大変危険な状態なんですよ!?」
看護師が慌てて車イスを持ってくる。
「大丈夫ですよ。この程度……」
力なく笑って眠っている兄のそばに近寄り
そっと手を当てる。
「………。」
生きていることを確かめるように。
その光景を暫く全員が黙って見ていた。
病室に移動すると直ぐにベッドの隣に椅子を置き、頭をベッドに預ける紬。
紬も看護師が云うように本当に危険な状態なのだろう。
誰もその行動を咎めたりはしなかった。
「社長……」
ポツリと紬が呟く。
「何だ?」
「多忙の中、大変申し訳有りませんが暫く暇を頂戴したいのですが………」
紬の眼は虚ろだ。
血が足りていないことも相まって、本当にこの世に存在しているか危うい状態だと云うことは誰の目で見ても判ることだった。
「構わん。出社出来るようになったら来い」
「有難うございます………」
そう言うと紬は目を閉じる。
大切な片割れが意識不明の重体なのだ。
今はそっとしておこう。
全員の見解は同じだった。
3人は紬が眠りに就いてから退室した。
空が仄かに明るさを持ち始めた。
その空をボーッと見て紬は頭を上げた。
早朝か。
視線を太宰に移す。
「馬鹿だね、治は。こんなことせずとも私は―――」
目を開けない兄に困った顔をしながら話し掛け、そっと口付けする。
直ぐに離すと、静かに告げた。
「行ってくるよ」
勿論、返事は無かった。
―――
翌日、探偵社に来てから谷崎は資料を集めていた。
「谷崎。此方も頼む」
「はい」
太宰の代わりに爆弾魔を追う事になったのだ。
勿論、立候補である。
ナオミを庇って怪我をした太宰さんの為にも――
その思いは強かった。
太宰が庇っていなければ紬と同じ状態になっていたのは間違いなく自分だ、と。
太宰兄妹の分をしっかり粉す!
そう心に決めて勤務に当たっていた。
「でも何故、ナオミさんが狙われたんでしょうか?」
「うーん……」
それだけは謎で仕方なかった。
ナオミは学生で一般人。
狙撃されるなんてこと、普通に考えたら有り得ない。