第8章 在りし日の…
ゴゴゴゴゴ……
何かを思い悩んでいる様子の中也と、それを期待の眼差しで見る太宰。
ばっ
「二度目はなくってよ!」
太宰の予言通り、『内股歩きのお嬢様口調』で捨てゼリフを吐いた。
「「あはははははっ!!」」
腹を抱えて笑い出す太宰。
その声に
「!?」
バッ
自分の進行方向。
階段の縁に腰掛けている人物の声が重なった。
「いやー。相変わらず治に遊ばれてるねえ、中也は。」
「なっ……!」
自分をおちょくっている男と似たような格好のその人物を中也は知っていた。
何時の間に!?
否、そんなことよりも。
よっ、と短く言って立ち上がると満面の笑みを向ける人物。
『理由は『私達』が先日――………』
脳裏を反芻する太宰の台詞。
さっきの違和感はこの事だったのか!
心の中で盛大に舌打ちする中也。
「久しぶりだねえ、中也。」
「紬……手前、行方不明って聞いてたが生きてやがったのか。」
「ふふっ。心配してくれてたのかい?」
「誰がするか!」
完全におちょくられている。
「あー最悪だ。手前ェ等二人が揃ってるなんて……」
「「先刻は幸運って云ってたのに」」
息ピッタリの台詞も仕草も全て四年前と同じもの。
中也の米神に青筋が浮かび上がる。
「うるせぇよ!つーか、紬に至っては何でその事知ってんだよ!何時から居やがった!?」
「え?中也が組織に戻ってきて『太宰の糞野郎が捕まったァ!?そりゃ傑作だ!』と鼻で笑って此処に向かって歩いて来ていた辺りから。」
ニッコリ笑って中也の隣まで降りてくる。
「最初からじゃねーか!何だ!?後付けてたのかよ!」
中也が捕虜である兄の居場所に案内してやった様なものだと云わんばかりの発言。
「そうだね。まあ、此処に居るのは予想ついてたけど。」
「~~~ッ!」
この腹黒兄妹はっ!
やられっ放しでいる訳にはいかない。
中也は決心する。