第8章 在りし日の…
「五大幹部会?莫迦な。あれは数年に一度、組織の超重要事項を決定する時だけ開かれる会だ。あるなら疾っくに連絡が……」
太宰の口から出た言葉に困惑し始める中也。
「理由は私達が先日組織上層部にある手紙を送ったからだ。で、予言するんだけど……」
中也は何か違和感を抱く。
それを知ってか、太宰の顔は完全に笑っている。
「君は私を殺さない。どころか、懸賞金の払い主に関する情報の在処を私達に教えたうえでこの部屋を出ていく。それも内股歩きのお嬢様口調でね。」
「はあ!?」
「私の予言か必ず中る。知ってると思うけど」
「この……状況からか?巫山戯る……手紙?」
「手紙の内容はこうだ。『太宰死歿せしむる時、汝らの凡る秘匿公にならん』」
「………?」
太宰の言葉の意味を判らずにいるのか、或いは内容を砕いて処理しているのか。
「!!」
後者であった中也は太宰との距離をとった。
「真逆手前……」
「元幹部で裏切り者の私を捕縛した。だけど上層部に『太宰が死んだら組織の秘密がぜんぶバラされるよ』っていう手紙までついてきた。」
コキッと首をならしながら続ける太宰。
「検事局に渡ればマフィア幹部全員、百回は死刑に出来る。幹部会を開くには十分過ぎる脅しだ。」
「そんな脅しに日和るほどマフィアは温くねえ。手前は死ぬ。死刑だ。」
「だろうね。けどそれは幹部会の決定事項だ。決定より前に私を勝手に私刑にかけたら独断行動で背信問題になる。」
太宰の説明に中也の表情が険しくなった。
「罷免か、最悪処刑だ。」
「そして……俺が諸々の柵を振り切って形振り構わず手前を殺したとしても………」
太宰はニッコリ笑っている。
「手前は死ねて喜ぶだけ?」
正解のようだ。
太宰の顔がパアッと華やく。
「ってことで、やりたきゃどうぞ」
ゴゴゴゴゴ……
中也は怒りを抑える。
「ほら早く」
そんな中也を挑発する太宰。
中也の怒りは脹れあがっている。
「まーだーかーなー?」
そんな様子を愉しそうに見ながら声を掛ける太宰。
カランッ
「何だ、やめるの?」
中也が手に持っていたナイフを落とす。
完全に降参のようだ。