第8章 在りし日の…
蹴り砕かれた壁を見つめる太宰。
「手前が何をたくらんでるか知らねえが――これで計画は崩れたぜ。」
太宰をゆっくり指差す中也。
「俺と戦え、太宰。」
人差し指をクイッと曲げながら挑発する。
「手前の腹の計画ごと叩き潰してやる。」
「……中也。」
「あ?」
その挑発に対し、突然パチンと指を鳴らす太宰。
「?」
その行為に何の意味があるのか。
黙って見ている中也。
ジャラッ
「!」
音をたてて太宰の両手を拘束していた手枷が外れる。
「君が私の計画を阻止?……冗談だろ?」
そう言いながら太宰が手に持っているのは一本のヘアピン。
「何時でも逃げられたって訳か。」
然程、驚きもしない中也。
寧ろやる気を掻き立てたようだ。
「良い展開になってきたじゃねえか!」
勢い良く地面を蹴り、太宰に向かっていった。
激しい戦闘が始まる。
しかし
中也の攻撃を読んで防御するも、力で中也に敵わない太宰は一撃を入れられ、壁際に抑え込まれていた。
「動きが読める程度で勝てる相手だと思ったか?」
「…ぐっ…」
片腕で首を締め上げられ呻く太宰。
「終いだ。最後に教えろ」
取り出したナイフを首に突き付けて問う。
「態と捕まったのは何故だ。獄舎で何を待っていた」
一度はナイフを離す中也。
「………」
「だんまりか」
そして、再度首に当てる。
その箇所から血が出始める。
「いいさ。拷問の娯しみが増えるだけだ」
ナイフに力を込めようとしたとき
「一番は……敦君についてだ」
太宰が話始めたため、ナイフを離す。
「敦?」
「君達がご執心な人虎さ。彼の為に70億の賞典を懸けた御大尽が誰なのか知りたくてね」
「身を危険に晒してまで?泣かせる話じゃねえか……と云いたいが」
首を掴む手に力を込める中也。
「その結果がこの態じゃあな。麒麟も老いぬれば駑馬に劣るってか?『歴代最年少幹部』さんよ」
「……」
「ま、運にも見放されたしな。」
愉しそうに話始める中也。
「何せ俺が西方の小競り合いを鎮圧して半年ぶりに帰ったその日に捕縛されるんだからな。俺からしたら幸運だったぜ」
「……くくっ」
愉しそうに話す中也に対し、
「何がおかしい」
「いいことを教えよう。明日『五大幹部会』がある」
太宰は嗤いながら答えた。