第7章 序章
「とりあえず太宰は放っとくとして問題は妹の方か。」
「そうですね」
「そういえば……」
何かを思い付いたのか。
敦が自分の脳裏に浮かんだ言葉を紡ぐ。
「何だ?何か知っているのか?」
「あ、いや、そうじゃなくて………」
国木田に問われてあたふたする敦。
「紬さんってどんな異能力者なんですか?」
「「………。」」
シーンと静まる事務所。
「……え?」
何か聞いたらマズいことだったのかな……
この空気に更にあたふたする敦。
「「そういえば紬(さん)って異能力者なのか(なんですか)?」」
「えぇ!?分かんないんですか!?」
全員が口を揃えて答える疑問に驚く敦。
「紬も敦が入る1週間程前に入社したばかりだからな」
「えぇ!?」
自分とそんなに変わらないのにあんだけ落ち着いていて仕事捌けるの!?
事実を受け止められないでいる敦。
「双子だから全く同じ異能力を持っているとか」
「ナオミの様に妹である紬さんは能力を持っていないのでは?」
「太宰と違って包帯グルグルしてないよねー」
「でも紬さん、元々は事務員を希望してたんでしょ?」
「「「!」」」
賢治の一言でハッとする連中。
太宰と行動を共にしていれば良いが
もしそうでなかったら………?
「………谷崎。」
「はい。捜しておきます」
―――
「ふんふふーん♪」
真っ暗な部屋で鼻唄を歌っている太宰。
両手は壁に繋がれ、この状況にした男に殴られた顔は彼方此方怪我をしている――にも拘わらずだ。
「……」
そんな太宰の様子に苛立ちを募らせる男は自らが纏う外套を操り始める。
そして
「~♪~♪たらーったったー♪」
暖気に唄う太宰の首を目掛けて攻撃を仕掛けた。
ドスッ!
その攻撃の鋭さは太宰の首を……
「……ああ、君。いたの」
落とすことは出来ずに背後の壁だけを抉る。
「此処に繋がれた者が如何なる末路を辿るか――」
太宰に触れた部分から蠢いていた外套は只の衣服へと戻った。
「知らない貴方ではない筈だが」
「懐かしいねえ。君が新人の頃を思い出すよ。」
目の前に対峙する男……芥川に向かって話始める。
「貴方の罪は重い。突然の任務放棄、そして失踪。」
鋭い目付きで太宰を睨む芥川。