第7章 序章
道端に少女が独り。
着物を着用し、首から携帯電話を提げている。
「こいつ昨日から同じ姿勢だぜ。死んでんじゃね?」
「あ。今、瞬きしたよ。」
通行人の男が少女に絡む。
「………。」
それでも少女は無言を貫き、無反応……だったが。
ピクリッ
目の前を砂色の外套を着た男性が通り過ぎるのに反応し、その男の外套を捕まえる。
「―――え?私?」
振り返って、自分の外套を掴んでいる少女を見た男性の名前は太宰。
その少女とは初対面のようで発言が疑問系だ。
「……見付けた。」
短く呟いた言葉と同時に少女から不穏な空気が生まれる。
目の前に現れたモノを見て、太宰は驚きの声をあげた。
「……これはまずい。」
―――
「太宰達が行方不明ぃ?」
呆れた顔をして敦の言葉に反応している国木田。
「電話も繋がりませんし下宿にも帰ってないようで。」
「また川だろ。」
「また土中では?」
「また拘置所でしょ。」
本気で心配している敦をよそに他の者達の反応は薄い。
「しかし、先日の一件もありますし……真逆マフィアに暗殺されたとか……」
「阿呆か。あの男の危機察知能力と生命力は悪魔の域だ。あれだけ自殺未遂を重ねてまだ一度も死んでない奴だぞ。」
心配そうに云う敦の言葉を一蹴する国木田。
「でも紬さんまで居ないんですよ……?」
「「「………。」」」
『太宰の妹だから』と大丈夫と思う反面、兄の様に何も言わずに不在することなど今まで無かった紬の名前が出てきて少し心配になる面子。
そんなとき
「ボクが調べておくよ。」
国木田と敦のやり取りの間に、別の声が入る。
その方向を見やる2人。
「谷崎さん無事でしたか!」
「与謝野先生の治療の賜物だな。」
えへへと言わんばかり頭をかく谷崎。
「谷崎。何度解体された?」
国木田の質問に一気に顔を青く染める谷崎。
「………四回。」
項垂れながら答える谷崎に、あー……とだけ反応する国木田、乱歩、賢治の3人。
何も解らずに疑問符を浮かべている敦。
「探偵社で怪我だけは絶ッ対にしちゃ駄目だよ。」
「?」
ガタガタ震えながらアドバイスをする谷崎に、矢張り疑問符を浮かべている敦。