• テキストサイズ

【文スト】対黒

第7章 序章


「剰え今度は敵としてマフィアに楯突く。とても――『元幹部』の所業とは思えぬ。」

「そして『君の元上司』の所業とは?」

負けじと言い返す太宰の顔面を殴り付ける芥川。

「貴方とて不損不滅ではない。異能に頼らなければ毀傷できる。その気になれば何時でも殺せる。」

「そうかい。偉くなったねえ」

「……」

「今だから云うけど君の教育には難儀したよ。呑み込みは悪いし独断専行ばかりするし」

太宰が挑発混じりの視線を寄越す。

「おまけにあの『ぽんこつ』な能力!」

「……!」

芥川は反論せずに手を握り締めただけだった。

「貴方の虚勢も後数日だ。数日の内に探偵社を滅ぼし人虎を奪う。」

太宰に背を向けて歩き出す芥川。

「貴方の処刑はその後だ。自分の組織と部下が滅ぶ報せを切歯扼腕して聞くと良い」

「できるかなあ、君に」

しかし、太宰の言葉に歩みを止める。

「私の新しい部下は君なんかよりよっぽど優秀だよ」

芥川の怒りが振り切れた。

ゴッ!

太宰を殴り付ける。

「処刑の前に貴方の大事なものを先に目の前で奪おう」

「へぇ……」

口から血を流しながら芥川を見る。

「貴方の隣に繋ぐために捜索中だ。時期に見付かる。目の前で凡る凌辱の限りを尽くそう」

「やってみ給えよ。出来るものならね」

ハッと笑いながら返事する太宰の目は一切笑っていない。

「紬が君たちの追跡で捕らわれるわけないからね。若し、仮に鉢合わせたとしても……返り討ちにあってあの世行きだ」

「ふん。戯言を」


芥川は最後まで話を聞かずに太宰に背を向けて歩き去った。



「紬は君達が考えている以上に残忍さを失ってはいないのだよ」


誰も居ない部屋で独り呟いた言葉は冷たく響いて―――消えた。
/ 449ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp