第6章 Murder on D street
別室で杉本の取り調べを観ていた太宰と敦、それから紬の3人は、乱歩が杉本に対して云った一言で事件が無事に終結したのを見届けて、その部屋を後にした。
「凄かったですね乱歩さん!真逆全部中てちゃうなんて『超推理』本当に凄いです」
ことの一部始終を振り返り、敦が感嘆の声をあげる。
「「………。」」
太宰と紬は何か考えている様な仕草をしながら敦の後ろを歩いていた。
「半分……くらいは判ったかな。紬は?」
「治と一緒だ。」
うーん、と言いながら会話する2人。
「判ったって……何がです?」
「だから先刻のだよ。乱歩さんがどうやって推理したか。」
「え?だってそれは能力を使って……」
「私も初めて目の当たりにしたけど……本物だね、彼」
「え???」
紬の発言の意味がわからない。
「君はまだ知らなかったか。あのね実はね、乱歩さんは能力者じゃないのだよ。」
「へっ!?」
「乱歩さんは能力者揃いの探偵社では珍しい何の能力も所持しない一般人なんだ。あと、ああ見えて26才だよ。」
「えっ」
衝撃の事実に驚きっ放しの敦。
「本人は能力を使ってる心算みたいだけど。」
「でも……どうやって事件の場所や時間を中てたんです!?」
警察も何も判らないと云っていたのに!
「彼、云ってたよね。『偽装の為だけに遺骸に二発も撃つなんて』って。でも三発撃たれてる死体を見たら誰だって“三発同時に撃たれた”って思うよ。バンバンバンで死亡。」
「あ……」
太宰の言葉でハッとする。紬が続ける。
「つまり彼は一発目で被害者が死んだことを知っていたのだよ。解剖がまだなのにそれを知っているのは」
「……犯人だけ。」
「「その通り。」」
「でも犯行時間も中てましたよ?『昨日の早朝』だって。」
「遺体の損壊が少なかったから川を流れたのは長くて一日。昨日は火曜、平日だ。なのに遺体は私服で化粧もしてなかった。」
「激務で残業の多い刑事さんが平日に私服かつ化粧なしとくれば死んだのは早朝、一応推理できる。」
太宰兄妹の推理を聞いて納得する。
「他の……犯行現場とか銃でおどしたとかはどうやって。」
「「そこまではお手上げだよ。乱歩さんの目は私達なんかよりずっと多くの手掛かりを捉えていたのだろう。ね?」」