第6章 Murder on D street
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「遅いぞ探偵社!」
怒りの混じった声音で3人に言葉を投げ掛けられる。
「ん、きみ誰?安井さんは?」
声を掛けた者は呼ばれた乱歩ですら知らない人物だったらしい。
本当に判らないとは…
此処に来るまで大変だった敦はゲッソリしている。
「俺は箕浦、安井の後任だ。本件はうちの課が仕切る。貴様ら探偵社は不要だ。」
にも拘らず、たった今、現場に着いたばかりの2人に対してきっぱりと言い放つ。
「莫迦だなあ。この世の難事件は須く名探偵の仕切りにきまってるだろう?」
乱歩は怒ることなく堂々と言い返す。
「抹香臭い探偵社など頼るものか。」
フンと鼻息を荒げ、負けじと言い返す箕浦。
「何で」
乱歩は然して気にもせずに淡々と聞き返す。
「殺されたのが――俺の部下だからだ。」
箕浦が少し顔を伏せて言うと、隣にいた警察官が遺体と思われるものに被せていたシートを捲る。
「今朝、川を流されている所を発見されました。」
捲ったシートの下に居たのは矢張り遺体。
「…………ご婦人か。」
乱歩が脱帽する。
「胸部を三発、それ以外は不明だ。殺害現場も、時刻も、弾丸すら貫通しているため発見できていない。」
遺体の前に屈み込み、説明する箕浦。
「で、犯人は?」
「判らん。職場での様子を見る限り、特定の交際相手もいないようだ。」
「それ」
乱歩が帽子を被り直し、苦笑する。
「何も判ってないって云わない?」
乱歩の指摘に箕浦が腰をあげ、乱歩を見据える。
「だからこそ素人あがりの探偵など任せられん。さっさと――」
「おーい。網に何か掛かったぞォ!」
箕浦の言葉を別の警察官が遮る。
その声の方を3人で振り返る。
「何です、あれ?」
「証拠が流れていないか川に網を張って調べているのですが――」
敦の疑問に、箕浦の助手の様にいる警察官が答えてくれる。
然し、その言葉も途中で遮られる。
「ひっ、人だ!人が掛かってるぞォ!」
「何だと!」
箕浦が素早く反応する。
浮かぶは1つの仮定―――
「まさか……」
「第二の被害者!?」
辺りは一瞬で騒ぎ出した。