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【文スト】対黒

第1章 再会


「昔から机にジッと座っていた試しがないからね、治は。」

ふふっと笑うと、机の片付けを始める。

「おい!書類はっ…」
「見ないよ。最も、一般人に見られて拙い書類など机にそう易々と放置などしていないのだろう?」

紬の云う通りだ。

幾ら太宰とはいえ、そういうところは抜かり無い。

黙って机の片付けをする紬を見ることにする。


にしても、だ。


「何だい?そんなに見つめなくとも君達に迷惑を掛けるよな事など、したりはしないよ?」

「それを疑ったり等していない。」

「へえ。じゃあ何故だい?」

首を傾げながら尋ねる紬。


「矢張り、似ている……否似すぎていると思ってだな。」

国木田が真顔で云う。


一人でも厄介なのに……太宰が二人居るようだ。

「ああ。そういうこと。当然じゃないか。」

「は?」

当然?

「私達は、ふ……」
カチャリ


紬の台詞に被った扉の開閉音が注目を集める。

「貴公が太宰の妹か。」

「ん?」

「「社長!」」

太宰に連れられて探偵社の長、福沢諭吉が現れる。

本当に話を通してきたらしい。


「探偵社に就職希望と訊いたが。」

「あ、はい。太宰紬と云います。」

「………福沢だ。」

笑顔で握手をする紬。

それに福沢が無表情で応える。


「紬、筆記の試験があるのだよ。」

「へえ。」

兄の言葉に関心を示し、社長と呼ばれた男の方をみる。


「執り行ってもらえるのです?」

「今回は特別に。国木田、用意しろ。」

「えっ………あ、はい。直ぐに。」


社長に云われ、直ぐに離席する国木田。


「筆記用具を持ち合わせていないのだが貸していただけるだろうか?」

「あ、僕のペンをお貸ししますよ。」

「有難う、谷崎君。」

「い、いえ。」

満面な笑みでお礼を云う紬に少し顔を赤らめる谷崎。


太宰の片割れだ。
顔立ちは整っている。


「社長、準備できました。」

「うむ。」

「場所は会議室で宜しいですか?」

「ああ。国木田が監督を勤めよ。」

「分かりました。」


こうして紬の試験が開始された。
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