第1章 再会
「改めまして。太宰紬と云います。」
「…国木田だ。」
「谷崎です。こっちは――。」
「妹のナオミです。はじめまして。」
ニッコリ笑って挨拶をするナオミに笑顔を向け、紬は太宰に向き直る。
「にしても太宰さん、急に走り出すから吃驚しましたよ。」
「あはは。それは申し訳ないことをしたね。」
「俺の電話も途中で切りやがって。」
「だから御免って。」
先程の焦った表情は何処に行ったのやら。
いつもの調子で皆と話す太宰。
「それで?太宰に会いたいなら直接言えば良かっただろう?」
「そうしたかったのは山々だったのだがね。如何せん、4年も音信不通だったもので探すところから始めなければならなかったのだよ。」
「は?」
笑顔で云う紬の言葉を理解出来ない国木田は固まる。
「4年もですの!?何故?」
ナオミが驚く。
「「……何故だったかな?」」
流石、兄妹。
台詞も仕草もタイミングも。まるで一緒だ。
「「時間が解決したのだろうね?もう忘れてしまったよ。」」
「「「………。」」」
見事なハモリ振りに一同、唖然とする。
「……では何故、今頃になって?」
「お金が底を尽きた。」
サラリと理由を述べる。
「ええ?!そんな理由で?!」
「………何か他の理由を考えておくべきだったかな?」
兄以外の全員にジトッと見られて苦笑する。
「そういえば治はどのようにしてこの職に就いたんだい?」
「何だい?急に。紬もウチで働きたいの?」
「そうだね。出来ればそうしたいのだよ。事務の仕事が良いのだけれど中々見付からなくてね。」
「ふむ。」
紬の言葉に、手を顎に当てて少し考える太宰。
「一寸、社長室に行ってくるよ。」
「よろしく頼むよ。」
ヒラヒラさせて出ていく太宰を笑顔で見送る。
最初から頼んでくれることを分かっていたかのようだ。
「その一寸の間、私は何しようか……ん?」
キョロキョロと紬が事務所を見ると、何かに目が留まったのか。小さく反応する。
「如何かしたか?」
「いや、あの机だけ妙に散らかっているなと思って。」
「良く気付いたな。お前の兄の机だ。」
国木田が頭を抱えた。
「ああ。道理で。」
納得したように苦笑し、机に歩み寄った。