第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス
「なッ……」
芥川の黒獣は消え、敦は元の人型になる。
「貴方は探偵社の――!何故ここに」
樋口の驚きの声に、に太宰が懐を漁る。
「美人さんの行動が気になっちゃう質でね」
取り出したのは先程まではめていたヘッドホンと長方形型の機械。
「こっそり聞かせて貰ってた」
質問の答えを教える。
「な……真逆、盗聴器!?」
樋口のポケットから小さな……見に覚えがない機械が出てくる。
「では最初から――私の計画を見抜いて」
「そゆこと。でないと」
ニッコリ笑い掛け紬を指差す。
「紬に『1回死ねば善い』なんて、言われ損だよ」
「なんとも思ってないくせによく云うよ、全く。」
やれやれと言わんばかりに紬も右耳の機械を外す。
「!?」
あの人も盗聴してたのか――!
改めて事実を目の当たりにして驚愕する樋口。
「ほらほら、起きなさい敦君。三人も負ぶって帰るの厭だよ私。」
「う……」
太宰が敦の頬をペチペチ叩く。
「ま……待ちなさい!生きて帰す訳には!」
帰る気満々の2人に慌てて銃口を向ける樋口。
「くく……くくく」
漸く芥川が反応し、樋口の行動を制止する。
「止めろ樋口。お前では勝てぬ。」
「芥川先輩!でも!」
必死に反論するも、樋口の姿は今の芥川の眼中に無い。
「太宰さん今回は退きましょう――しかし人虎の首は必ず僕らマフィアが頂く。」
「「なんで?」」
「簡単な事。その人虎には――闇市で七十億の懸賞金が懸かっている。裏社会を牛耳って余りある額だ。」
「「へえ!それは景気の良い話だね」」
緊張感がまるで無い2人。
「探偵社には孰れまた伺います。その時素直に七十億を渡すなら善し、渡さぬなら―――」
「戦争かい?」
紬が芥川の言葉を遮り
「探偵社と?良いねぇ元気で。」
太宰が続く。
そう言い終えると、太宰達の放つ空気が変わる。
「「やってみ給えよ――やれるものなら。」」
息ピッタリに言い放った言葉に、芥川は何も言わなかった。