第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス
「『羅生門』」
芥川が云うと黒獣が出現して敦を迎え撃ち、敦の左脇腹から後ろ足にかけて切り裂く。
「へえ。中々、動きが速くなったじゃないか。」
「!」
矢っ張り知り合い!?
紬が感心しながら呟く声に樋口が反応する。
敦の受けた傷はかなりの大きさだったが、敦はバランスを崩したり、壁に激突したりすることなく着地する。
すると直ぐに、ボコボコッと傷口が蠢く。
「再生能力!しかも之程の高速で―――!」
完治した敦が、再び芥川に対峙する。
「芥川先輩!」
「退がっていろ樋口。お前には手に負えぬ。」
指示を出すと、樋口が停止する。
「ふふっ。部下まで持つようになったのだねえ」
「!」
紬は樋口に微笑み掛けると直ぐに視線を敦達に戻した。
敦が地面を蹴り、芥川の間合いに一気に詰め寄る。
「疾いッ」
慌てて羅生門を防御するも間に合わず、後方の壁まで飛ばされ、激突する芥川。
その光景に、頭に血が昇ったのか。
銃を拾い上げ、敦に向けて発砲する樋口。
ビスビスッ
確実に弾は命中するも、全発弾かれる。
「ほお。こりゃすごい。」
「銃弾が通らない……!?」
その光景に感嘆する紬に、驚愕する樋口。
ジロリッ
敦が標的を芥川から樋口に変える。
「―――!」
「何をしている、樋口!」
慌てて体勢を整え、芥川が構える。
「『羅生門・顎』」
黒獣が敦を捕らえる。
敦から逃げるも壁に阻まれ、その壁に背を預けていた樋口の目前まで飛び掛かり、迫っていた敦。
その敦が、胴から真っ二つに為る。
「………。」
敦の血で染められる樋口は固まったまま。
「ち……生け捕りの筈が。」
悔しそうに呟く芥川。
ドサッと重たい音を響かせて落下した敦の周りに突如、雪が降り始める。
それと同時に、サアァァァ…と敦の姿が、消えた。
「『細雪』……!」
「!」
ニッと谷崎が笑う。
「今裂いた虎は虚像か!では――」
辺りを探す芥川。
そして、フッと背後から忍び寄る気配に気付く。
「『羅生門・叢』―――!」
「グオオオオオオォオ!!」
正面から衝突する正にその時―――
「はぁーい。そこまでー。」
軽い調子で二人の間に男が乱入してきたのだった。