第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス
「マフィア自体が黒社会の暗部のさらに陰のような危険な連中だが、その男は探偵社でも手に負えん。」
「何故――危険なのですか?」
「そいつが能力者だからだ。殺戮に特化した頗る残忍な能力で軍警でも手に負えん。俺でも――奴と戦うのは御免だ。」
何かを思い出すように国木田が告げる。
その神妙な面持ちに、敦の顔に恐怖の色が滲む。
「まあ、今から怯えていても仕方ないよ敦君。」
ポンッと敦の頭を叩いて笑顔で云う紬。
「そ……そうですよね」
へへへと、笑う。今の一言に安堵したようだ。
「国木田君。敦君と谷崎君が出掛けるならば私が備品の買い出しに行こうか?」
「あ。忘れていた。頼めるか?」
「お安い御用だとも」
矢張り笑顔で云う。
こうしてその場にいた太宰と国木田を残して出掛けていった。
紬達を見送ってすぐ、太宰はヘッドフォンを装着し、ソファーに横になる。
国木田は社内美化に徹していた。
暫くは太宰の事など気にせずに掃除に集中していたが、歌まで歌い出す始末。
気にならないワケが、無い。
「オイ、邪魔だ。除け。」
掃除機を掛けることを中断して太宰に言うも、ヒラヒラと手を動かして反応するだけで動こうとはしなかった。
「全く、何故こんな奴が探偵社に……我が理想にはこんな……」
ぐぬぬ…と怒りで顔を歪めながら呟く国木田。
怒りが一定を越え、行動に出る。
「おい太宰!仕事は如何した!」
太宰のヘッドフォンをむしり取り、怒鳴り付ける。
勿論、太宰の方が一枚上手。
既に耳を手で塞いでいた。
国木田の手からヘッドフォンを奪取すると直ぐに着け直す。
そして怒りが溢れている国木田に対して
「天の啓示待ち」
紬が向けた笑顔と同様のものを見せながら、云った。