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【文スト】対黒

第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス


「参加するかい?賞典は今――七十万だ。」

ガタッと勢いよく立ち上がる敦。
突然のことに谷崎が驚く。

敦の目は完全に賞金に眩んでいるようだ。

「中てたら貰える?本当に?」

「自殺主義者に二言は無いよ。」

ニヤリと笑う。

「まあ治にそんな貯蓄が在るとは思えないけれどね。」

「同感だ。」

ボソリと云った紬の言葉は敦には聴こえなかったようだった。

「勤め人」

「違う」

「研究職」

「違う」

「工場労働者」

「違う」

「作家」

「違う」

よくも此れ程までに出てくるなと感心しながら聞く谷崎兄妹。

「役者」

「違うけど役者は照れるね」

「うーん。うーん。」

ネタ切れなのか、言葉が紡げない敦。

「だから本当は浪人か無宿人の類だろう?」

「違うよ。この件では私は嘘など吐かない。ねえ?紬。」

「そうだね。嘘を付く必要が無いからね。」

紬は太宰の言葉を肯定する。

「うふふ。降参かな?じゃ此処の払いは宜しく。」

「あっ!」

ご馳走樣~と機嫌良く言いながら太宰は席を立ち、紬もそれに続く。

ピピピピピ…ッ

「うン?」

谷崎の電話が着信を告げた。

「ハイ。……え。依頼ですか?」

―――

全員で探偵社に戻る。

依頼者はスーツを纏った綺麗な女性だった。

ちょこんとソファーに座っている。

対応をするのは勿論、谷崎。
その後ろに先程の喫茶店メンバーが並んで依頼主を見ている。

「…あの。」

女性が口を開く。

「えーと調査のご依頼だとか。それで……」

話を始めようとした

「美しい……」

正に、谷崎が話を聴く体勢に入ったところ。


その瞬間に太宰が邪魔に入ったのだ。

「睡蓮の花のごとき果敢なく、そして可憐なお嬢さんだ。」

「へっ!?」

依頼主の女性の手を取り、笑顔で話し掛ける。

「どうか私と心中していただけないだろ――」

スパァァンッ

太宰が堂々と女性を口説いているところを、国木田が盛大に頭を叩いて遮る。

「いやー。綺麗に決まったねぇ」

「……良いんですか?」

実の兄ですよね?と心配する敦。

「構わないよ。私の目の前で女を口説く治なんて1回死ねば善い」

「ははッ…ははははは……」


笑顔で云う紬に乾いた笑いしか返せない敦だった。
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