第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス
シン…
一瞬で静寂が場を支配する。
「?」
その静寂を破ったのは太宰兄妹。
「「何してたと思う?」」
「へ?」
「なにね、定番なのだよ。新入りは先輩の前職を中てるのさ」
「はぁ……じゃあ……」
敦は持っていた湯呑みを置き、谷崎達の方を見る。
「谷崎さんと妹さんは……学生?」
「おっ、中ッた。凄い」
「どうしてお分かりに?」
「ナオミさんは制服から見たまんま。谷崎さんの方も――齢が近そうだし勘で」
再び湯呑みを手にし、敦が答える。
「やるねぇ。じゃあ国木田君は?」
「止せ!俺の前職など如何でも――」
「うーん。お役人さん?」
顎に手を当てて考えた答えを述べる敦。
「彼は元学校教諭だよ。数学の先生。」
「へえぇ!」
「昔の話だ。思い出したくもない。」
太宰の回答に驚きの声をあげる敦とムッとする国木田。
何か納得……って云ったら投げられるな。
「ふふっ、国木田君らしいねぇ」
「言うな!」
紬の突っ込みに頭を抱える国木田。
「「じゃ私は?」」
「太宰さん達は……」
ニッコリ笑いながら敦に問い掛ける太宰に反応するも言葉が出てこない様子の敦。
想像もつかん……!
「無駄だ小僧。武装探偵社七不思議の一つなのだ、こいつの前職は。」
「最初に中てた人に賞金が有るンでしたっけ。」
「そうなんだよね。誰も中てられなくて懸賞金が膨れあがってる。」
「あ、そんな面白い事をしていたのかい?」
「うん。」
紅茶をかき混ぜながら答える太宰に、国木田が鋭い言葉を放つ。
「俺は溢者の類いだと思うがこいつは違うと云う。しかしこんな奴が真面な勤め人だった筈がない。紬は……まあ仕事は捌けるがな。」
「ふふふっ、国木田君に褒められたよ。しかし、私の前職は勿論、治と一緒だ。」
「そうなのか。」
まあ、谷崎兄妹並の仲の良さだしな。
納得する国木田。
「ちなみに懸賞金って如何ほど。」
敦が先程でた『懸賞金』と云う単語に食い付いた。