第5章 ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス
とある喫茶店……
其処で一際目立つグループが一組。
「すンませんでしたッ!」
テーブルに手を勢いよくつけて頭を下げる『爆弾魔』……役だった谷崎。
「へ?」
「その、試験とは云え随分失礼な事を」
ポカンとしている敦に申し訳なさそうに謝罪する。
「ああ、いえ、良いんですよ」
意外と良い人だ、この人……
慌てて気にしてない旨を述べる。
「何を謝ることがある。あれも仕事だ、谷崎。」
「国木田君に盛大に蹴り飛ばされたりしてたしねぇ」
紅茶を飲みながら云う紬の言葉に「ゔっ」と云い淀む国木田。
「国木田君も気障に決まってたしねぇ」
『独歩吟客』!と唱えながら国木田の顔真似をして見せる太宰。
「ばっ……違う!あれは事前の手筈通りにやっただけで」
「……」
太宰と国木田のやり取りを苦笑しながら見守る敦。
「ともかくだ、小僧。貴様も今日から探偵社が一隅。ゆえに周りに迷惑を振りまき社の看板を汚す真似はするな。」
お茶を飲みながら真剣な顔で敦に説く。
「俺も他の皆もそのことを徹底している。なあ太宰。」
そうやって視線を太宰兄妹に移す。
「あの美人の給仕さんに「死にたいから頸絞めて」って頼んだら応えてくれるかなあ」
「あの強面の厨房の方に「死にたいから頸絞めて」って頼んだら応えてくれるかなあ」
うっとりしながら別の方向を観ている兄妹。
「黙れ、迷惑噴霧器」
大体お前はいつも……と、国木田の説教が始まった。
「ええと」
それを困った顔で見た後、敦に視線を戻す。
「改めて自己紹介すると……ボクは谷崎。探偵社で手代みたいな事をやってます。そンでこっちが」
「妹のナオミですわ」
兄に抱き着き、自己紹介をするナオミ。
「兄様のコトなら……何でも知ってますの」
「き―――兄妹ですか?本当に?」
「あらお疑い?勿論どこまでも血の繋がった実の兄妹でしてよ…?このアタリの躯つきなんてホントにそッくりで……ねえ 兄様?」
「いや でも……」
ナオミの発言に対し、国木田が敦に目だけで訴える。
こいつらに関して深く追求するな!
あ……はい
事を正確に察知し、敦も返事する。
「そういえば皆さんは探偵社に入る前は何を?」
敦は素朴な疑問を口にした。