第39章 復職
「「……。」」
太宰紬はとある場所にポツンと1脚だけ設置されている椅子に座っている。
そして、その椅子に足を。
手には手錠を嵌めて、拘束をしている目の前の黒服2人を特に表情を変えずに見ていた。
それが終わったと同時に2人の男がその場に現れた事で紬の意識が黒服から其方に移った。
「おや。君は確かーーー」
その内の片方に見覚えがあった。
「昨日は有難うございました」
昨日の態度とは打って変わって、恭しく頭を垂れながらそう告げたのは昨日の殲滅作戦の指揮を執っていた○○だ。
「中々斬新な御礼の仕方だね」
そう余裕のある表情でクスクス笑いながら云う紬に苛立ちを覚えつつも、視線が自分から隣に移った事で小さく舌打ちして感情を抑える。
「御初に御目に掛かります。私、××と申します」
怪しい笑顔を称えて自己紹介した××の言葉を聞き終えると視線を直ぐに戻した。
「それで?丁寧に拘束までして御礼だけ、って訳ではないんでしょ」
首を傾げながら云う紬に○○がニヤリと口を歪めた。
「当たり前だろ。昨日は散々、虚仮にしてくれたなーーーー『裏切り者』さんよ!」
ザッ!
○○の声に応じたかのように手に拷問器具や武装品を所持した黒服の男たちが一斉に紬を取り囲んだ。
それを見ても紬の反応は薄い。
「おや?私は君の事なんて虚仮にした覚えは無いよ?」
「黙れ!貴様さえ来なければ俺は今日、五大幹部にっ!」
バンッ!
いつの間にか取り出した小型銃で威嚇射撃を行う。
その銃弾は紬の左脹ら脛を掠めて壁にめり込んだ。
「……やれやれ。五大幹部を決めるのに昨日の功績だけが反映される訳ないじゃないか。何故、昨日の案件に拘るの?」
破れてしまった下袴を見ながら問いかけた紬に、××が一歩前に出る。
「○○は或る企業との取引を成功させていましてね。昇格も目の前だと囁かれていたのですよ」
「……。それは最近の事?」
「ええ。つい先日」
「………そう」
紬は、ふぅ、と息を吐き出した。
そして、××の方を向いて会話を続ける。
「君は隣の人の部下なのかい?」
「私が?いいえ、真逆。彼とは同期で良き好敵手ですよ」
××は紬の質問に笑顔を返した。