第4章 或る爆弾
「「莫迦!」」
太宰兄妹の声が響く。
ピッ
ピッ…
それでも爆弾を離すことはしなかった―――。
「……………?」
何時まで経ってもこない、衝撃。
ゆっくりと目を開けて目の前を見る。
目の前に経つのは太宰兄妹と国木田、そして爆弾魔の男。
「やれやれ……莫迦とは思っていたがこれほどとは」
国木田が呆れて
「「自殺愛好家の才能があるね彼は」」
太宰兄妹がケラケラと笑っている。
「へ?…………え?」
事態が全く飲み込めない。
「ああーん兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」
「痛だっ!?いい痛い、痛いよナオミ。折れる折れるって云うか折れたァ!」
目の前では人質だったはずの女学生が爆弾魔の男に抱き着いてギャーギャー言っている。
「……………へ?」
「小僧。」
思考がついていかない敦に国木田が話し掛ける。
「恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め。」
「そう云うことだよ敦君。つまりこれは一種の――入社試験だね。」
「入社………試験?」
「その通りだ」
別の声が社内に響き渡る。
現れたのは和服姿の男性―――。
「社長」
国木田が頭を下げる。
「しゃ 社長!?」
敦は驚きながら男を見る。
「そこの太宰めが「有能なる若者が居る」と云うゆえその魂の真贋、試させてもらった。」
武装探偵社 社長 福沢諭吉――能力名『人上人不造』
その言葉を、あんぐりと口を開けて聞いている敦。
「君を社員に推薦したのだけど如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内で揉めてね。で、社長の一声でこうなったと。」
太宰が説明する。
が、まだ善くわかっていない敦。
「で社長……結果は?」
「太宰に一任する。」
「………」
「合格だってさ。」
ニッコリ笑って云う太宰。
「つ つまり……?僕に斡旋する仕事って云うのは此処の……?」
漸く頭がついてきたらしい。
クスッと笑う太宰。
「武装探偵社へようこそ」
「うふ よろしくお願いしますわ」
太宰の一言で、人質だった女学生こと、ナオミが挨拶をする。
「い 痛い!そこ痛いってば!ナオミごめんごめんって!」
必死に謝る爆弾魔の男こと、谷崎潤一郎――能力名『細雪』
「ぼ 僕を試すためだけに……こんな大掛かりな仕掛けを?」
腰を抜かす敦。