第4章 或る爆弾
「や やややややめなさーい!親御さんが泣いてるよ!」
「な 何だアンタっ」
ひいい怖い!恐い!
太宰達のせいで爆弾魔の説得を始める敦。
しかし、その心中は恐怖で一杯だ。
孤児であること、友達が居ないこと、抑も院を追い出されて行く宛がないこと。更に、害獣であること。
自分の身の不幸さを並べ立て、犯人に迫る。
「敦君。駄目人間の演技上手いなぁ……。」
「あれ、演技かい?」
物陰から敦の行動を見守る太宰兄妹。
あまりの駄目人間振りに、爆弾魔も怯んでおり
遂に――
「え!いや!ボクは別にそういうのでは!」
逆に脅え始めた。
『今だ』
太宰がその隙を見逃さず、国木田に合図を送る。
「手帳の頁を消費うからムダ打ちは厭なんだがな……!」
手帳を取り出して白紙のページを開く。
「『独歩吟客』」
素早く手帳に書込み、破る。
その紙片に書かれた文字は『鉄線銃』――
「手帳の頁を鉄線銃に変える」
そういった瞬間に、紙片は本物の鉄線銃に姿を変えた。
チャキッ
その鉄線銃を犯人目掛けて発砲する。
「なっ……」
見事、起爆スイッチに引っ掻け、弾き飛ばした。
「「確保っ!」」
太宰兄妹の合図で国木田が飛び出し、犯人に掴み掛かった。
蹴りを入れ、犯人を拘束する。
「一丁あがり~」
「お疲れ様~国木田君」
のんびりとした口調でそう言いながら物陰にいた太宰兄妹が出てくる。
犯人が確保され力が抜ける敦。
爆弾が動いていないことを見て、安堵の息を漏らす。
はあ良かった……
そう思って太宰を見る。
満面な笑みで此方を見て居たため応じた。
そんな時だった。
トンッ
「ぶッ!」
誰かに押され、前方に倒れる。
ピッ
何かが手に触れ、音を立てた。
ピ?
「あ」
「「「あ」」」
敦の手の下に在ったのは犯人の手から弾き飛ばした起爆スイッチ。
ピッ
爆弾のカウンターが5秒の表示に切り替わる。
「わあああああああッ!??」
「爆弾!爆弾!あと5秒!?」
犯人確保の安堵も束の間、事務所はまた騒然とする。
爆発!?部屋がふ 吹き飛ぶっ!?爆風を押え…
何か爆弾に被せないとっ!
敦は慌てて爆弾の方に駆け寄る――
「「なっ」」
爆弾に覆い被さった。
あれ?……僕何やってんだ?
そう思いながらも爆弾を抱き締めた。