第39章 復職
中也は目的の部屋に辿り着くと脱帽をし、扉を叩敲した。
中からの返事を確りと聞いて扉を開ける。
「お早う中也君」
「お早う御座います首領」
恭しく頭を垂れてお決まりの挨拶を済ませ、昨日の報告を手短に行った。
中也の報告を一通り聞き終え、「ご苦労様」と労いの言葉を発したところから話し手が入れ替わる。
「それで、紬君は如何だい?」
「任務も大人しくこなしていますし、今のところ不審な動きはありません」
「否、そうじゃなくて」
「?」
中也は「任務の進捗状況」を問われるがままに報告したが森が苦笑して否定する。
「紬君の様子は如何だい?」
一単語付け加えられて再度問われたことによって中也は「あー……」と呟いた。
「調子は………あまり」
「そう」
先程、再確認する事が出来た紬の姿を思い浮かべながら中也は答えた。
「中也君」
「はい」
少し間をおいて切り出された言葉に中也の姿勢が更に良いものとなる。
「紬君は『何か』の為に此処に戻ってきたのだろう」
「……。それを探れば宜しいのでしょうか?」
中也の問いに首領は首を横に振って否定した。
その反応に驚きつつも、どこかで安堵してしまった自分に「いよいよ末期だなァ」等と考えながら中也は次の言葉を待つ。
「紬君は離反せずに組織に貢献する。それは確定事項だ」
「それならば何を注視しておけば?」
中也がそう訊ねるのは尤もだ。
紬をポートマフィアに案内してきた時点から紬の行動を監視する様に命を下したのは誰でもない、目の前にいる首領なのだ。
紬が組織に貢献する事が判っているならば「監視」なんて必要無い筈ーーー。
と、其処まで考えて中也はハッとなった。
一寸待て。首領は「監視しろ」とは云わなかったようなーーー………