第39章 復職
食糧品や酒を買い込んで。
中也のセーフハウスに着いた時には日付を跨ごうとしている時間帯だった。
「ほら。この紙袋だけは手前が持て」
座席を埋め尽くす沢山の紙袋やスーパーの購い物袋を抱える中、其処まで大きくない茶色の紙袋だけを紬に渡す。
「此れだけで良いの?スーパーの袋くらい持つよ」
「否、いい。重くは無ェからな」
「そりゃそうだろうけど」
渡された袋だけを抱えて中也の後ろを付いていく。
荷物の量にも差があるが、唯一持つように云われた紙袋の重さもそれに比例しているな等と考えると中身が気になり始める。
「中身は何かなー」
「ばっ!?おい!こんなところで開けんなよ!?」
「えー?そんなこと云われると益々気になっちゃうなー」
誰も居ない昇降機に乗り込んでから紬はガサガサと音をさせながら紙袋の口を開けた。
「……え。」
「チッ、見てもいいが絶対出すなよ!?」
「いや……うん。流石に袋からは出さないけど………」
中身を見て微妙な反応を示すと紬は紙袋の口を元の通りに戻した。
昇降機が目的の階に到着した合図を告げる。
広い廊下を歩いて目的の場所につくまで紬は無言だった。
部屋に入って、リビングにまっすぐ向かう。
中也は持っていた荷物を一先ずソファに下ろした。
「取り敢えずシャワー浴びてこい。其れまでに片しておくから」
「?うん」
「えーっと着替えは……」
「?」
ガサガサと紙袋を漁り出す中也をジーッと見る紬。
そして、自分の手にある紙袋の存在を思い出し、中也に差し出す。
「あ、これ」
「あ?いや、中身見たんだろーが」
「うん。大丈夫。中也にこんな性癖が有ることは今日購ってもらった高級カニ缶に誓って内緒にしておくから」
「何云ってんだ?」
訝しげに首を傾げながら云う中也にキョトンとした顔をする紬。