第39章 復職
「お帰り、中也」
「おう」
ストッ
自身の隣に着地した中也を紬は笑顔で迎えた。
「如何だった?」
「数が多いのと、獲物が高性能の銃だっつー事以外は全然大したこと無かったな」
「そう」
○○の部下が思わず時計を見て、驚愕した。
この2人が来て、20分すら経っていなかったのだ。
「お。芥川も来てたのか」
中也に声を掛けられ一礼する。
「結構派手に暴れたからそろそろ軍警が駆けつけてくるかもなァ」
中也は懐から煙草を取り出すと火を着けた。
「もう次の指示は出してるし時間が無いことは云ってある」
「そうか。ンじゃ先に帰るとするか」
「中也ぁー私、お腹空いたー」
「知るかよ。何か買やいいだろうが」
「お金無いもん。何か食べさせてくれないなら中也の財布盗むよ?」
「………チッ」
2人はその場に居た人間の事など気にも止めずに歩き出した。
あ、後宜しくねーとだけ云い残して。
急に現れ、
苦戦している戦況をいとも簡単にひっくり返し、
何事もなく去っていく2人組を○○の部下は呆然と見送ることしか出来なかった。
そんな中、ゴソゴソと動き出した人間を芥川の目が捕らえる。
2人の姿が見えなくなったと同時に、○○が通信端末を取り出し、電子メールを打ち始めたのだ。
その様子をコホコホと小さく咳をしながら眺めている芥川。
しかし、何も云わなかった。
何かを企てたところで、目の前の連中が紬を謀ることなど天と地がひっくり返っても有り得ないということを正しく理解しているからだ。
「何故紬さんが………」
それよりも紬自身の事だ。
先日まで敵対組織に居たと云うのに何故ーーー。
そう思いこそすれど、訊ねることは無いだろうと自己完結する。
首領の直下である中也が行動を共にしているため、ポートマフィアにとっては問題ない状況なのだろうから。
何もする事がなくなった芥川は、空を仰ぎながら自身の問題について考え始めたのだった。