第39章 復職
作戦開始と同時に鳴り響いていた程の轟音が鳴り響く。
「うふふっ。矢っ張り中也は書類仕事より戦闘の方がイキイキしてるなぁ」
元より戦況を見下ろせるように陣取られていた高台の端に腰掛けて、何処からか取り出した双眼鏡を覗きながら愉しそうに云う紬に言葉がでない○○。
全く状況が理解できていないのだ。
「『何故、中也が殲滅を行っているのか理解できない』って顔をしているね?」
「!?」
○○の方など全く見ずに紬は話し掛ける。
「何が如何なっている………何故、彼奴が………否、此のままでは××の奴に……!」
「安心し給え」
「……え?」
此処で漸く紬が双眼鏡を下ろした。
しかし、○○の方は見ない。
「『明日、五大幹部の席に誰かが着任する』ーーーだっけ?」
「そうだ!俺は短期間で幹部まで登り詰める程ポートマフィアに貢献した……!私以外に彼の席に座る人間などっ!!」
必死に云い放つ○○の言葉が、紬の首を漸く動かした。
紬はキョトンとした顔をして数秒黙った後、プッと小さく吹き出した。
「うふっ……うふふふ………あははははは!!!」
「なっ!?」
「「「!?」」」
盛大に笑い始めた紬に、○○は赤く、黒服達は青く顔を染め上げた。
「君、本当に面白い冗談が得意だね。あー笑わせてもらったよ」
「冗談……だと………!?」
ワナワナと震える○○を笑いすぎて出てきた涙を拭いながら見る紬。
「たったこれしきの殲滅に何十人と云う人数を割いたわりに、成果を上げるどころか多大な損害を出した程度の君が五大幹部?此れを笑い話と云わずに何だと云うんだい?」
「ーーっ!」
よっこいしょ、と立ち上がりボトムの砂埃をパタパタと叩きながら紬は云った。
口調こそ今までと変わらないが、瞳は明らかに違った。
思わずビクッと肩を震わせるほどの冷気を纏った、眼。
しかし、○○はそんなことなど関係なかった。
殲滅出来なかったのは前線の連中が使えなかったから…。
「云わせておけば!中原中也を使えるならば俺だって梃子摺る事など!」
「君は頭が悪いね」
ハッと鼻で笑う紬。
○○の怒りが膨れ上がる。
「中也と同等の事が出来なかったのに何故並べると思ってるんだい?」