第39章 復職
しかしポートマフィアとて、それなりの戦力を揃えてきていた。
芥川はその事を指摘して騒ぐ樋口を黙らせた後、暫く様子を見ることにした。
だが、それも長くは続かなかった。
「先輩っ!このままでは……」
「……。」
一時間ほどで凡てが終わる予定だった筈だが、
あれから既に50分ーー。
戦況は思わしくないどころか、みるみる悪い方に向かっている。
矢張り、出向くべきかーーー
芥川がそう心で思ったのと同時に、ある言葉が脳裏に過る。
とある人物と先日交わした約束ーーー
「……チッ…」
「…………?」
舌打ちをした芥川の方を恐る恐る見る樋口。
そんな時だった。
『全員、一旦引き給え』
「「!?」」
今まで指揮を執っていた者とは全く違う声が、通信機から聴こえてきたのだ。
「真逆………そんな筈は………」
「先輩……?」
その声を聞いた瞬間、芥川がカッと眼を見開いた。
そして今までとは違い、通信機の声を漏らさんとして必死になり始めた芥川の様子に驚く樋口。
『聴こえていたかい?芥川君。一旦戻ってくるんだ。早くし給えよ。こんなことで時間など使いたくないのだから』
「御意!」
「うぇ!?先輩!?」
そう云うと芥川は樋口の腕を掴んで全力で走り出した。