第39章 復職
音を立てないよう配慮していたが無意味だったようだ。
ソファから、ゴソッと物音がすると同時に上半身だけ起こした紬が此方を見ていた。
「……何処行くの」
「少し出てくるだけだ」
「仕事かい?」
んーっと背伸びをしながら立ち上がった紬の表情を見て、幾分かマシになったな、等と思いながら口では「否」と短く云う。
「ただの購い物だ。手前ももう少ししたら出るだろ?」
「ん?……おや、もうそんな時間か」
時計を確認し終わると紬はソファに座り直す。
「勝手に部屋ン中、いじんじゃねーぞ」
「え?それはフリかい?中也ってば職場にまで疚しいもの隠してるの?」
「そんなわけあるかっ!」
何時も通りの云い合いをして、中也は部屋を後にした。
静かになった部屋。
紬は中也の座っていた椅子に移動して腰掛ける。
「私達兄妹に振り回されて………ホント中也は変わらないねぇ」
何故かシワの寄っている書類や、普段ならば読みやすい字を書く筈なのに、乱れた字で記載された書類を見ながら紬はクスクスと笑い出した。