第39章 復職
「ふぁ~~よく寝た」
んーっと背伸びをしながら出てきたのは予想通りの人物。
「よく寝た、じゃねーよ。何で此処に居ンだ」
「何でって先刻まで仕事してたんだもん」
「そういうこと訊いてンじゃねェよ」
「うん、知ってる」
ニコッと笑って云う予想通りの人物、こと太宰紬に舌打ちをきめる。
そんな中也をよそに紬はソファに移動してごろんと横になった。
「手前、今起きたんだろーが!また寝てンじゃねェよ!」
「五月蝿いなぁーカルシウム不足かい?あ、だから小さいんだったね!」
「ンだと!?」
軽く口喧嘩していると、中也の端末が電子文書の着信を告げる。
「……。」
中也は端末を操作し始める。
差出人は不明。
みるからに怪しい。
ウイルスでも仕込まれたイタズラか、と紬をチラッと見る。
「ん?如何したんだい?急に大人しくなって」
「……別に」
「?」
否。
紬に『嫌がらせ』をされるような事はしていないーーー。
兄と違って、中也に対しては何かしない限り何もしてこないことを中也は正しく理解している。
中也はそのメールを開いた。
そしてたった一行書かれた文に目を通し、舌打ちした。
「え、急に何」
「……何でもねェよ。手前にゃ関係ねェ」
「?」
そう短く紬に云うと素早く返事をする。
すると予想よりもずっと早く返信がきた。
「………ハッ、上等だ」
そのメールを見て、そう口にした中也を紬はわりと本気で心配している表情で見詰めた。
「中也、頭でも打ったのかい?通話状態じゃない端末に話し掛けるなんて」
「ンなわけねーだろ!」
そう云いながら端末を操作する。
「ふーん?じゃあ君の頭を可笑しくさせたのは誰かなー?」
「あ!?おい、返せ!」
紬は素早く中也の傍に寄ってパッと端末を取り上げた。
「え、消しちゃったの?」
「『迷惑メール』だったからな」
「何それ」
「だから手前にゃ関係ねェって云っただろ」
紬は、むーっと唸りながら端末を大人しく返す。
それを仕舞うと中也は小さく溜め息をついて着席した。