• テキストサイズ

【文スト】対黒

第38章 悲劇なる日曜日


首領の執務室を出ると壁に背を預けて立っている人物が目に入った。

「……終わったのかよ」

「うん。ちゃっかり仕事まで押し付けられてさぁ」

「……。」

やれやれ、とおどけた様子の紬を見て眉間にシワを寄せる中也。

「中也、姐さんに会いたいんだけど」

「手前に云われなくても連れてくるように云われてる」

「この間の茶菓子美味しかったなーまた出ないかなー」

「何で呑気に茶をしばけると思ってンだよ」

「え?お茶しに行く心算なのに違うの?」

キョトンとした顔で云った紬に中也は頭を抱えた。


「………ホントに何考えてンだ?手前は」


聞きたいことと云いたいことは山のようにある、
そう書かれた顔付きで見ている中也の帽子をヒョイッと取る。

「あっ!手前、返せッ!」

「相変わらずちっちゃいなー中也は」

頭をぽんぽんと撫でて、中也の帽子を自身の頭に乗せる。

「『元通り』になるだけだよ」

「……。」

紬の頭に向かって伸ばしていた手がピクリと動いて、止まった。
それを見逃さなかった紬は、中也の頭に乱暴な手つきで帽子を乗せた。

「痛っ!」

「そんなわけだからお世話になります中也幹部」

「何が中也幹部だ!言葉と態度が比例してねェじゃねぇか!」

「中也を敬うのはちょっと無理が……。主に身長面が原因で」

「手ン前ェ!」

「ああ!?いだだだ!おっへはふねらないへよ!!」

ぎぎっと頬をつねる中也にじたばた抵抗する紬。
その様子を見て、小さく息を吐くと中也は手を離した。

「うぅ……痛い……」

少し紅くなった頬を撫でている紬。

「少しは『元に戻って』きたな」

「!」

小さく呟かれた言葉を正確に拾って驚いたように目を開き、直ぐにクスクスと笑いだす紬。


「只今ーーー『相棒』」

「………おう」


不意を付かれた言葉に、中也は思わず帽子を被り直して紬から顔を背けた。

/ 449ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp